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2022.04.07
レポート | 体験レポート
知財ハンターが注目する「SXSW INNOVATION AWARDS 2022」受賞テック6選
毎年3月にアメリカテキサス州オースティンで開催される、音楽、映画、インタラクティブをテーマにした巨大ビジネスカンファレンス&フェスティバルSXSW。世界最大のテクノロジーの祭典とうたわれるSXSWは、2007年にはTwitter、2009年にはFoursquare、2011年にはAirbnb、2012年にはPinterestを世に送り込んだ、世界を代表する一大イノベーションイベントです。
2020年はコロナ感染拡大で中止となり、2021年はオンライン開催、そして2022年は初のリアルとオンラインでのハイブリッド開催となりました。
フィルムや、ゲーム、ピッチアワードなど多岐に渡るアワードが開催されるその中でも、SXSWイノベーションアワードは、その年の様々な革新的なアイデアを評価する新興企業のアワードであり、知財図鑑でも特に注目するアワードです。本レポートではイノベーションアワードを受賞した18の企業・サービスの中から、知財ハンターが注目したテクノロジー・サービスを6つご紹介します。
▼「SXSW INNOVATION AWARDS 2022」知財ハンター6選
Speculative Design部門
市場初の廃棄物ベースのフィラメント – UBQ素材 (イスラエル、テルアビブ)
Innovation in Connecting People部門
人と人をつなぐイノベーション - Proto M (カリフォルニア州ロサンゼルス)
Student Innovation部門
Tapis Magique - MIT Media Labs (マサチューセッツ州ケンブリッジ)
Wearable Tech部門 & Best in Show部門
STRAP TECH - STRAP Technologies (テキサス州オースティン)
VR, AR & MR部門
VR 外科トレーニングプラットフォーム - Osso VR (カリフォルニア州サンフランシスコ)
AI & Machine Learning部門
パーソナライズされた脳ケア - Omniscient Neurotechnology(o8t) (オーストラリア、シドニー)
史上初の廃棄物ベースのフィラメント – UBQ素材 (イスラエル、テルアビブ)
◯Speculative Design部門 グランプリ
【概要】UBQは、2012年設立のイスラエルのUBQマテリアル社が開発した製品で、廃棄物をリサイクルしてつくられるバイオベースの熱可塑性プラスチック。同社は変換技術を開発し、分別されていない家庭ごみから作られた世界初のバイオベースの熱可塑性プラスチック「UBQ」の特許を取得した。プラスチック、木材、コンクリートに代わる持続可能な素材として環境問題に貢献する。
イスラエルのUBQ Materialsというスタートアップは、残飯や紙、プラスチックなどを含むゴミの山から熱可塑性プラスチック原料・UBQを作り出す事業を手がけています。UBQ社によると、現在年間20億トン以上の都市固形廃棄物(MSW)が発生しており、その70%以上が埋立地で処理され、その量は3番目に大きなメタンの発生源になっているとのこと。発表によると、UBQを生成するために従来埋め立てされるごみを回収で迂回させても、新たにプラスチックを生成するよりも多くの音質効果ガスを防ぎ、UBQが1トン生産されるごとに、12トンものCO₂換算量が環境に流入するのを防ぐことができるそうです。
人と人をつなぐイノベーション - Proto M (カリフォルニア州ロサンゼルス)
◯Innovation in Connecting People部門 グランプリ
【概要】「PROTO M」は、自宅やオフィスで使用できる卓上型のホログラムデバイス。筐体上部に内蔵されたAIスマートカメラで、ユーザーやコンテンツをホログラム化して筐体内部に映し出す。バーチャル上の買い物やエンターテイメント、遠隔医療や遠隔コミュニケーションやNFTなどのデジタルアートのディスプレイなどとして使用できる。
ロサンゼルスのProto Inc. の卓上ホログラムデバイスPROTO Mは、全ての家庭やオフィスで使用できるように設計された完全自己完結型のホログラムデバイスです。同社によるとこの卓上モデルは、企業や教育や美術館などのほか、すでに医療用途でも使用されています。創造性、形、機能、全体的な経験から評価されSXSWイノベーションアワードを受賞しました。PROTO(プロト)は「最初」を意味し、「消費者がスマートフォンだけでホログラムになることを可能にした最初の製品」の意味が込められています。ゴーグルやヘッドセットなしで、家庭でも企業でも使用できるPROTO Mは立体的で没入型の仮想コミュニケーションをさらに加速させる技術です。
学生の革新 - Tapis Magique - MIT Media Labs (マサチューセッツ州ケンブリッジ)
◯Student Innovation部門 グランプリ
【概要】コレオミュージカル インタラクティブ・カーペット「Tapis Magique」は、身振りと音を同期させるインタラクティブな電子ニットカーペット。感圧センサーが内部に張り巡らされており、上に乗る人の体の姿勢やジェスチャーに基づき、3Dセンサーデータを生成し音響データに変換することで、没入型の音響空間をリアルタイムで生成する。また、暗闇で発光する糸を使うことで、夜間において星空をつくり出すような演出も可能。
MITの学生たちによる研究のTapis Magiqueがイノベーションアワードの学生部門を受賞しました。リアルタイムに没入型の音響空間を作り出すこのプロジェクトは、アートとテクノロジーの創造的な相互作用を示し、物理とデジタルのつながりを通じて、テキスタイル、ダンス、音楽の感情的な繋がりを示すとされています。
STRAP TECH - STRAP Technologies (テキサス州オースティン)
◯Wearable Tech部門 グランプリ& Best in Show部門 グランプリ (W受賞)
【概要】STRAP Technologiesの製造する「Ara」は、環境と周囲の障害物を検出する視覚障害者向けのウェアラブルデバイス。ジャイロスコープ、加速度計、光センサー、超音波センサーを使用して、ユーザー周辺の物体や障害物を検出し、振動の触覚フィードバックを介して通知する。
白杖は足元の安全な歩行を促すのに対して、STRAP Technologies社の「Ara」は、頭、胸周りの障害物のほか、足元の穴や階段、動く障害物も検出するリアルタイム情報の伝送機能を備えます。「視覚障害者の自律性と独立性が人権である」と捉える同社の技術は、触覚伝送による言葉に頼らないグローバルコミュニケーションと、両手が自由に使えるウェアラブル端末により、視覚が不自由な人々のより多くの自立と機動性を可能にし、「ウェアラブル」カテゴリだけでなく「ベストインショー」部門も受賞しました。
Osso VR 外科トレーニングプラットフォーム - Osso VR (カリフォルニア州サンフランシスコ)
◯VR, AR & MR部門 グランプリ
【概要】「Osso VR」は、VRを活用した外科トレーニングおよび評価プラットフォーム。メタバース上のVR手術室で、リスクのない手術練習やトレーニングの反復を通して複雑なワークフローを習得できる。また、Osso VRの外科シミュレーショントレーニング分析により、正確さや効率性、習熟度を測定。自動化されたコーチングにより習熟度を高めることが可能。
OculusなどのXR機器を使用してVRで外科トレーニングや評価のできるプラットフォームOsso VRは、Oculusの優先パートナーでもあり、手ごろな価格でテクノロジーを活用しているとのこと。VRno仮想空間でシミュレーションを行うことで、世界中どこからでもアクセスできます。さらに同社によると、Osso VRでのVRトレーニングは、従来のトレーニング法と比較して、参加者の全体的なパフォーマンスが230%向上したとの調査結果も出ています。
パーソナライズされた脳ケア - Omniscient Neurotechnology(o8t) (オーストラリア、シドニー)
◯AI & Machine Learning部門 グランプリ
【概要】Omniscient Neurotechnology(o8t)社のQuicktomeプラットフォームは、高度な分析技術を使用して、標準のMRIスキャンから1時間以内に正確な脳地図を作成する。手術前に各患者の脳ネットワークのパーソナライズされた脳マップを提供し、外科医がリスクを最小限に抑えることに役立つ。
o8tのQuicktomeは、世界で初めて、脳神経外科医が脳外科手術を計画するために使用するものとして、米国DDAによって2021年7月21日(現地時間)、認可されました。人工知能と機械学習を活用した脳のマッピングは、これまで不可能だった脳の洞察を生み出すとされています。AIと機械学習を活用して、脳のつながりに独自の強力なビューを作成する革新的な機能として高く評価されました。
Omniscient Neurotechnology 公式サイト
以上、知財ハンターが注目した「SXSW イノベーションアワード 2022」受賞テクノロジーでした。興味のある方はSXSW公式サイトやアーカイブ、各企業のホームページを訪れてみてはいかがでしょうか。
文:知財ハンター/福島 由香