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2025.02.14

レポート

XR・メタバース&コンテンツの最先端が生み出す新たな体験の数々―「TOKYO DIGICONX」レポート

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XR・メタバース&コンテンツ領域でのビジネスの可能性を広げる総合展示会「TOKYO DIGICONX(トウキョウ デジコンクス)」。2025年1月9日から11日まで東京ビッグサイトにて、XR、メタバース、AI技術から、アニメ、ゲーム、映像などのコンテンツまで、デジタル領域で活躍する先進的な企業が集結しました。今年で2回目を迎えたこのイベントには、約200事業者が出展し、延べ約6千人が訪れました。

実際に足を運んでみて印象的だったのは、人間の身体とデジタル空間を融合させた革新的なXR技術の数々。人間のリアルな体験を活かして拡張していくことで、今までにない魅力的なコンテンツが次々と生まれていました。本記事では、会場で出会った驚きの技術と魅力的なコンテンツについて、知財図鑑の取材ライターがご紹介します。

(取材・文・撮影:杉浦万丈)

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AI × XR × WEB3 × 生命 ― 現実と仮想が交差する『せきぐちあいみ XRアート体験フォトブース』

開発/出展:せきぐちあいみ

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せきぐちあいみ氏は、VRヘッドセットとコントローラーを駆使して仮想空間内に3Dアートを描くアーティスト。今回の体験型展示の目玉である「XRアート体験フォトブース」では、せきぐちあいみ氏のアート作品を来場者自身のスマートフォンを使って鑑賞できました。

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草花や動物をモチーフとした日本的な立体表現を得意とするせきぐちあいみ氏。会場には和を基調とした屏風と花の装飾が設置され、来場者はAR/VRコンテンツ用アプリ「STYLY」を使って作品を体験しました。ブースに設置されたQRコードを読み取ると、スマートフォン上に立体的なアートが出現し、現実の風景とデジタルアートが見事に融合した世界が広がります。

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鑑賞者は360度自由に作品を鑑賞できるので、孔雀の尾羽の裏側など細部まで丁寧に作り込まれた立体造形を楽しむことができます。多くの来場者が自身の姿と作品を合わせた記念撮影を楽しんでいました。

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現実と仮想空間を組み合わせることで、視覚的にも触覚的にも没入感のある体験ができます。XRアートの興味深いところは、没入するようなリアルさがありつつも、仮想空間内では物理的な制限から自由なところです。今後さらに自由で多彩な表現が広がっていくことでしょう。

KDDIの最先端技術が生み出す新たな記録の形 『おもいで3D』

開発/出展:KDDI 株式会社

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日本を代表する通信事業者のKDDIが、さまざまな最先端技術の展示を行っていました。そのなかでも、多くの来場者の興味を引いたのが「おもいで3D」です。「おもいで3D」とは、全身を360度スキャンすることで、人物の3Dデータを手軽に生成できる装置。スキャンしたデータをWebのブラウザ上からすぐに見ることができます。生成された3Dモデルのポーズや背景の変更、新たに動きを追加するなどして、自由な編集を楽しむことができます。

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特筆すべきは、膨大な3D点群データを品質を損なうことなく効率的に圧縮し、モバイル回線でもスムーズに伝送できるKDDIの最先端の技術力です。この技術により、現実世界の被写体を高精細かつリアルタイムで仮想空間に再現できるようになり、メタバース等での新たな活用が期待されています。

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「おもいで3D」は、家族の成長記録など、定期的に思い出を3D化することで、従来の家族写真に代わる新しい形の思い出作りが可能となります。加えて、スキャンデータを基にフィギュアを制作することもできます。家族や友人だけでなく、子どもの工作や、ペットのフィギュアを作るなどして思い出を形あるものにするのもよいでしょう。

この装置の設置に必要なスペースは、2メートル四方と比較的コンパクトで可搬性にも優れています。そのため、商業施設やテーマパーク、各種イベント会場など、さまざな場所での展開が期待されています。

街や観光地をデジタル収集!GPS連動でつくる自分だけのデジタル空間『Fralee』

開発/出展:株式会社 HoloSpace

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129572-6-a4a644d8f33bd75736540c8bd3534881-1920x1280.png © 株式会社 HoloSpace

ARやNFT、GPSを活用したエンタメコンテンツを提供する株式会社HoloSpace。2025年1月にアプリ「Fralee」をリリースしました。「Fralee」とは、訪れた場所や日常の出来事を記録することで、自分だけの箱庭をつくることができる位置情報連動型アプリ。日々の行動や思い出の場所をアプリに残すことによって、200種類以上のデジタルアイテムを収集でき、それらを組み合わせて世界に1つだけのオリジナル箱庭をつくることができます。

129572-6-9b01e1e5eaaeafb50b2bc4d32192ce00-2860x1540.png 実際のアイテム。© 株式会社 HoloSpace

このアプリは、各地域の特徴的な観光資源をデジタルアイテムとして収集できるため、訪れた場所の思い出をより魅力的な形で残すことができます。例えば、東京の建物を使って東京ならではの箱庭をつくり、京都では伝統的な建造物を活かした京都特有の箱庭をつくれます。土地の特色や文化を反映した箱庭づくりは非常に面白そうです。

作成した箱庭は友達とSNS上でシェアできるだけでなく、NFCチップを搭載したミニチュアグッズにして手元に残すこともできます。コレクションするのも楽しそうです。

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ブースの担当者の方から、「地域の特徴的な看板などアイテムの幅を広げていくことで、観光資源の少ない場所でも新たな魅力的なスポットを創出できる可能性がある」とのお話を伺いました。人気のレアアイテムを集めるために、これまで注目されていなかった場所が新たな観光スポットとして脚光を浴びることが期待されます。

関連リンク https://fralee.jp

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000129572.html

メタバース×リアルの融合による次世代のショッピング体験『HIKKY SPECIAL BOOTH』

開発/出展:株式会社 HIKKY

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株式会社HIKKYは、誰もが自由に創作・参加できるオープンなメタバースの実現を目指すテクノロジー企業。メタバース構築エンジンの開発から大規模バーチャルイベントの運営、VR/AR領域のコンサルティングまで、デジタル空間における幅広いサービスを展開しています。

34617-419-072ad83815b5e39e5195461096d312df-3840x1080.jpg バーチャルマーケット2024 Winterの様子 © 株式会社 HIKKY

34617-419-58e852b3eb7c93b68f30fcdad86be3a5-3840x1080.png バーチャルマーケット2024 Winterの様子 © 株式会社 HIKKY

ブースでは、代表的な事業である「バーチャルマーケット(Vket)」についてお話を伺いました。「バーチャルマーケット(Vket)」とは、メタバース上の会場でクリエイターが制作した3Dモデルやアバター、アクセサリーなどのデジタルアイテムを購入できるほか、実際の洋服やPC、飲食物などのリアル商品の取引が行われるVRイベントです。世界最大級のメタバースイベントとしてギネス記録を保持しています。

さらに同社は、リアルとバーチャルを融合させた新しい形のイベント「VketReal」も展開しています。2024年12月に池袋サンシャインシティで開催された「VketReal 2024 Winter」では、実際の飲食ができる「Vket食堂」や謎解きゲームなど、リアルの体験を活かしたコンテンツを提供しました。最新のXR技術を活用し、バーチャルとリアルが一体となったアトラクションや体験を楽しむことができます。

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ブースでは、Vtuberと会話しながらショッピングを疑似体験できるコーナーがありました。デジタルならではの演出で、何もない空間から突然パーカーが出現したり、サイズを自在に変更したりと、従来の店舗販売とは一味違った体験でした。実際の購入はできませんでしたが、2ショット撮影ができたり、レシートを印刷してもらうことで、リアルとデジタルが融合したマーケット体験を味わえました。次回イベント開催時には、実際に参加して商品を購入してみたいと思います。

関連リンク https://hikky.co.jp

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000419.000034617.html

VRで危険を体感しながら学ぶ、新しい安全研修『VR安全体感教育 3軸VRシミュレータ』

開発/出展:明電システムソリューション 株式会社

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社会インフラを支えるシステム開発を行う明電システムソリューションが、VRを使った研修システムをつくりました。「VR安全体感教育 3軸VRシミュレータ」は、労働災害を安全に体験できる革新的な教育システム。従来の目で見て学ぶだけのVR教育とは異なり、3軸シミュレータと呼ばれる特殊な装置により、実際の事故や災害に近い臨場感のある体験が可能です。

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本システムの中核となる3軸シミュレータは、VR映像と連動して動作します。モーションプレートが傾きや揺れ、衝撃を再現し、安全帯で体験者の転倒を防止する構造です。また、座位での体験も可能で、複数人が同時に学習できるため、効率的な安全教育を行えます。

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教育コンテンツは、工場や製造現場、建設現場で起こりうるさまざまな事故を再現しています。例えば、高所作業時の移動ハシゴからの転落や、ロール機への巻き込まれなど、実際の現場で起こりやすい事故を安全に体験することができるのです。

実際に体験してみると、些細な不注意が重大事故につながる危険性を身をもって感じられました。思わず声が出てしまうほどの没入感と汗をかくほどの緊張感がありました。体験にリアルさがある分、安全確保のための手順や注意点を明確に理解し記憶できます。このように、危険に対する意識を高めながら、体で覚える新しい安全教育は画期的だと感じました。

まとめ

今回のTOKYO DIGICONXで紹介された技術の多くは、デジタルとリアルの融合により、人々の体験をより豊かにすることを目指していました。せきぐちあいみ氏のXRアート作品は芸術表現の新たな可能性を示し、「おもいで3D」は今までにない思い出づくりを提供します。「Fralee」は日常の体験をデジタルで拡張し、「VketReal」はショッピング体験を進化させました。そして「VR安全体感教育」は、実践的な学習環境を提供することで、働く人々の安全を守ることに貢献します。

これらの技術に共通するのは、単にデジタル空間を作り出すのではなく、現実世界での人々の体験や感覚を大切にしながら、それをデジタル技術で補完し、より魅力的なものへと昇華させている点です。今後も、人々の生活や体験をより豊かにするXR技術の発展が期待されます。来年にはどのような技術やコンテンツが生まれているのでしょうか。

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取材・文・撮影:杉浦万丈

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