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2020.05.21 Upload

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卒論OPEN AWARD 2021【入賞論文特集】

卒論

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学生たち自らが卒論を公開し、研究室に埋もれがちな素晴らしい論文が世の中に見つかりやすくなることを目指し開催した「卒論 OPEN AWARD 2021」。知財図鑑編集部による厳正な審査の結果、最優秀賞・優秀賞を受賞した4名の研究論文を「知財」として知財図鑑に掲載しました。最優秀賞を受賞した熊澤玲香さんのショートインタビューを交えて紹介します。

最優秀賞 受賞インタビュー

【最優秀賞】
日本の美意識の印象整理〜色・形・動きに注目して〜

●受賞者:熊澤玲香/京都工芸繊維大学大学院

〈研究概要〉
現代の日本は、モノやサービスで満たされたことにより、社会的欲求や価値観がより感性的に変化している。本研究では、美意識は日本人の潜在的共通認識であると仮定し、美意識を言語ではなく色、形、動きの観点で捉え、ビジュアルや数値で表現することを目的とした。美意識の傾向をまとめ、美意識を活用するデジタル図鑑ツール「日本感じ辞典」を作り、心に響くモノづくりを促進し日本のモノづくりや経済力を発展させる基盤となることを目指した。

kumazawa

▼研究のきっかけと内容について

●今回のテーマ「日本の美意識」に着目したきっかけは何だったのでしょうか?
大学の研究室で、海外をマーケットとした日本企業と共同研究をする機会や、研究の一環で台湾やカンボジアなどに出向く中で“日本らしさ”を伝える場面が多かったのですが、美意識について共有することは海外の方はもちろん日本人同士でも難しさがあり、なかなか言葉では表現しづらいものだと気づいたことがきっかけです。当時は建物や風景の写真を見せるなどして伝えていたものの、相手と共有しきれていないもどかしさがあったので、これを解消する方法はないものかと、美意識の研究に着手しました。

●研究を行う上で大変だったこと、難しかったことはありましたか?
美意識についての調査の際、コロナ渦のご時世もありオンラインでのインタビューとなったことが大変でした。zoomやmiroなどを含め使ったことのないツールも駆使しましたが、モニター上では正確に共有できない「色」に関する調査だけは対象者に実際に集まっていただくなど、臨機応変な対応を求められたのは今年ならではだったかと思います。また今回は美意識を定量化して伝えることにこだわっているのですが、プログラミングに強い知人にPythonを使って処理してもらうなど、多くの人の協力をいただき感謝しています。

 ●導き出された研究結論に対する感想を教えてください。
「海外の方が日本を表現するときにも使えそう」とか、「食感や音などからも分類ができそう」など、自分が想定していなかった活用アイディアをいただいたのが興味深かったです。また先行研究の中には出てこなかった“豪華絢爛”というワードが、現代では日本の美意識として認識されているということも、研究を進める中でわかりました。つまり時代の変化によって美意識自体が変わっていくというのは大きな発見でしたね。

日本感じ

 ️▼研究を通した「未来の妄想」

●今後この研究成果が社会実装されたとして、どんな場面で使われることをイメージしていますか?
「日本感じ辞典」は、凛・侘び寂び・趣などの日本的美意識から連想する色・形(文字フォント)・動き(オノマトペ)をまとめているのですが、現時点では相手に伝えるためのツールというよりは、デザインコンセプトを作る際の拠り所として使っていただくと良いなと思っています。私は大学卒業後デザインや企画の仕事をしていますが、たとえばそうしたビジネスの場でも、デザイナーがある色を選んだ根拠を示す時などに役立つのではないでしょうか。

●今回のアワードでは、この研究があらゆる異文化理解に応用できる可能性に評価が集まりました。もしこの「日本感じ辞典」のメソッドを応用するとしたら、どのようなアイディアがありますか?
今回は“日本人”の共通認識としてこのツールを作ったのですが、調査対象者が私と同じ世代に偏っていたのが課題でした。世代によって感覚も違うはずなので、世代間の相互理解促進にも繋げていきたら面白いなと思っています。さらには外国にもその国らしさはそれぞれあると思うので、各国バージョンがあると面白いですし、お互いが理解できることの”差”を埋めるためのツールとして活用されていったら本望ですね。

▷「日本感じ辞典」の知財記事はこちら

優秀賞3名

優秀賞に選出された3名の研究論文も知財図鑑に掲載しました。下記より記事がご覧いただけます。

●落語音声合成 〜人を楽しませる音声合成に向けて〜
加藤集平/総合研究大学院大学
▷知財記事はこちら

●インド算術書 『トリシャティー』 〜著者未詳の注釈 『トリシャティーバーシュヤ』 と共に〜
徳武太郎/京都大学大学院
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●発酵食品すぐき由来の副産物を商品化する 〜すぐきの特性と上賀茂瓦窯群瓦技術〜
平野通永/立命館高校
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