No.330

知財図鑑関連アワード受賞知財

2021.05.17

著者未詳の注釈『トリシャティーバーシュヤ』と共に

インド算術書『トリシャティー』

インド

概要

(「インド算術書『トリシャティー』」は、「卒論OPEN AWARD 2021」の優秀賞受賞論文の関連知財です。)

本研究は、8世紀頃にインドで活躍した数学者シュリーダラがサンスクリット語で著した算術書『トリシャティー』を著者未詳の注釈『トリシャティーバーシュヤ』と共に校訂し、数学的解説と併せて和訳したもの。同注釈には古グジャラート語の影響がみられることから、注釈者は12世紀から18世紀の間に北西インドで活躍したと推定し、10種の写本の比較により、『トリシャティー』の出版本には含まれない6詩節を発見した。本研究では、古来インドの人々が語り継いできた算術の伝統を現代人が知ることができ、文化・伝統の理解や人材育成に繋げることができる。また、インドの算術書には動物や神様が登場する興味深い例題が数多くあるため、応用して子供向けの教材作成や文化理解の促進が期待できる。

なにがすごいのか?

  • 先行研究がない史料を比較・研究し、読み解きと同時に新たな詩節も発見

  • 古来インドの研究者の思考と伝統を現代人に伝え、文化の理解を促進

  • インド文化ならではの算術に基づいた新たな教材としての応用の可能性

なぜ生まれたのか?

『トリシャティー』は初心者のための簡便な算数の教科書であり、後世の数学書に大きな影響を与えたもの。同書は1899年に一度出版されているが、編者が参照した写本の情報が与えられていないという重大な欠点があった。だが、先行研究のほとんどが同刊本にのみに基づいており、今もなお『トリシャティー』の研究は基礎資料を欠いた状態が続いていた。この状況を打開すべく、10種類の写本に基づき『トリシャティー』の新たな校訂本の作成に着手した。使用した写本のうちの一つには著者及び年代未詳の注釈『トリシャティーバーシュヤ』が含まれる。『トリシャティーバーシュヤ』は『トリシャティー』が与える算術規則と例題に対して一つひとつの計算手順を詳細に示しているため、当時の人々がどのような手順で計算していたのかを知ることができる。その意味で『トリシャティーバーシュヤ』は貴重な史料といえるが、先行研究が皆無だったため、『トリシャティーバーシュヤ』も併せて校訂した。

相性のいい産業分野

教育・人材

インド文化をもとに小学生向けに算術を楽しく解説したYouTube動画「さんすうクリット」

AI

古来のインド学者の思考回路を再現したトリシャティーAI

旅行・観光

算術の歴史から土地の文化を紐解いていくインド旅行ツアー

官公庁・自治体

インドならではの動物や神様が出てくるキャッチーな算数教材による、児童の学力意識の向上

アート・エンターテインメント

インドの文化と算術思考をモチーフにした脳トレ算数ゲーム

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : ©Getty Images