No.147
2020.05.15
ニューラルネットワークを用いて味覚を再現
味覚センサーレオ
概要
味覚センサーレオは、AI技術を用いてヒトの味覚を再現した味覚センサーである。人間が味を感じる「味蕾」という舌の部位の代わりとなるセンサー部分で食品や飲料から電気信号を測定。独自のニューラルネットワーク(脳の神経回路の一部を模した人工的な数理モデル)を通して5つの基本味を定量的な数値データとして出力する。ニューラルネットワークを用いることにより、コーヒーに砂糖を加えていくと苦味が減ったように感じるなどの、味の相互作用も加味したデータ解析が可能となっている。
なにがすごいのか?
基本味を定量的に分析することが可能
食品同士の相性度を計測し、可視化
味覚の経時変化を測定することが可能
なぜ生まれたのか?
慶應義塾大学発のベンチャー企業であるAISSY株式会社によって開発された。CEO鈴木隆一氏が学生時代にアルバイトをしていたラーメン屋の再建で味の評価、定量化に苦労した経験を基盤に、日本が世界で勝負できる「食」に注目した。味覚を定量的な数値データとして扱うことで、「食の未来を見える化する」ことを目指している。
妄想プロジェクト 妄想プロジェクト
安全に食せる毒味フード
味覚センサーレオによる「味覚のデータ化」を用いれば、本来人間が絶対に口にすることはできない食品シリーズ「毒味フード」が生産できるかもしれない。死に至る薬物、人体に影響をきたす毒キノコ、幻覚が視えてしまう草・・・。普通の人生では味わえない危険なポイズンテイストの品々が、食べても全く問題ない成分で作られていれば、一生に一度くらいはその風味を口にしてみたくはならないだろうか。
また、こうしたエンターテインメント的な好奇心をくすぐる用途以外にも、例えば教育や医療の現場で、本来避けるべき危険な味・匂い等を身をもって体験できる機会があれば、危機を察知する感覚を自らの舌で覚えることができるだろう。
実現事例 実現プロジェクト
Amazon Bar(アマゾンバー)
「Amazon Bar」は期間限定で銀座にオープンした「メニューのないBar」。この企画は、世界一の品揃えを誇るAmazonの酒類事業の認知を高めるために実施され、味覚分析に基づき来店者に最適なお酒のレコメンドを提供した。味覚分析には、「味覚センサーレオ」が活用されており、来店者は数問のシンプルな質問に答えるだけで、膨大な種類のお酒から今の気分にぴったりのお酒がその場でサーブされた。
なぜできるのか?
基本5味の検出原理
基本5味(甘味、旨味、酸味、苦味、塩味)の味物質の濃度がそれぞれ、酵素電極やイオノフィアと呼ばれるセンサーによって検出される。これらのセンサーは酵素反応による電子の移動やイオンの移動によって味物質の濃度を検出する。
ニューラルネットワーク
検出した味物質の濃度が、すでに学習させている各濃度に対応する人の官能評価のデータと照らし合わされ、人の舌で感じられる味の強さとしての数値が算出される。
相性のいい産業分野
- 食品・飲料
美味しさの証明を行い、食品同士の相性を可視化
「体に悪いけど食べたい味」を健康的な食品で代替生産
- メディア・コミュニケーション
味の定量分析による競合商品との差別化・販売戦略の立案
- 生活・文化
過疎化が進む地域での伝統食の味を再現することにより、食文化を継承
- 教育・人材
ワインや茶道など、熟練者にしかわからない味の微差をチャート化
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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