No.1149

2026.06.26

摩擦をほぼ排除して回転し続ける浮かぶローター技術

浮上ローター

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概要

「浮上ローター」とは、宙に浮かばせることで摩擦の影響をほぼ排除し、回転し続けることができるロータ技術。ローターは古典物理学と量子物理学の両分野において、重力、気体の圧力、運動量など、さまざまな現象の測定に用いられている。しかし、重力や空気の圧力、物体の動きなどを測るときに使う回転の力(トルク)や回転の勢い(角運動量)は、摩擦によって大きく左右されてしまう。沖縄科学技術大学院大学の研究チームは宙に浮かぶローター技術を開発し、これにより摩擦の影響をほぼ排除することに成功した。

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なぜできるのか?

長年開発を阻む原因とされてきた「渦電流」

ミクロ(微視的)研究において利用される光学式または電気式の浮上装置は、極めて高度な環境や装置を必要とする。これに対し、冷却することなく室温で動作する常温磁気浮上を利用したマクロの磁気浮上システムは、構造がよりシンプルであるだけでなく、環境への耐性も格段に高く、ミクロの装置で浮上する原子粒子とは異なり、重力の影響を受けるため、実用的な重力測定や、量子物理学と古典物理学の境界領域における基礎研究にも適している。しかし、これらの装置は長年、渦電流による減衰によってその開発が阻まれてきた。この浮上ローターでは、この問題となっていた渦電流による減衰を解決することができ、さまざまなセンシング技術への応用が期待される。

軸対称性による渦電流の減衰

渦電流は、電気を通しやすい物質が不均一な磁場内で磁石に近づけたり、遠ざけたりするなど位置を変えると、物質内部に発生する電子の循環電流のこと。これにより反対の磁場が生じ、摩擦のような抵抗となり、運動を妨げる。今回開発された装置は直径約1センチのグラファイトディスク(グラファイト素材の円盤)と数個の希土類磁石が用いられおり、このシステムは、シミュレーションによるモデル化、数学的な理論検証、そして実験による実証を経て開発された。グラファイトディスクは軸対称により渦電流による減衰がまったく生じない。この減衰が生じないためには、グラファイトディスクと磁石をどれだけ理想的な軸対称に加工できるか、そして可能な限り完全な真空状態に近づけてどれだけ空気抵抗を減らすことができるかが、システムの精度を左右する重要な要素となっている。

浮上力を維持する純粋なグラファイト製

今回の実証では、純粋なグラファイト製を採用することで、強力な浮上力を維持する。また、理想的な条件では、渦電流による減衰も全く起こらない。まず、研究チームは、シリカでコーティングしたグラファイト粉末をワックスに混ぜ込んだ正方形のプレートを作成した。これにより渦電流がプレート全体ではなく粉末の個々の粒子に閉じ込められ、渦電流減衰が劇的に低減することができたが、グラファイト粉末を結合するために使用されたワックスは、システムの浮上力を著しく低下させた。プレートの設計上、上下移動時に微弱な渦電流による減衰が生じてしまう。その理由は磁場の強さ(磁束)が変化し、シリカでコーティングされたグラファイト粒子内部に渦電流が発生するためだ。しかし、グラファイト製のローターディスクは、磁石の上で中心軸のまわりを回転しているあいだ、同じ磁場内に留まる。そのため、磁束の変化が生じず、渦電流による減衰は起こらなくなる。

高精度なセンサーなどへの応用が可能

製造工程に実用的な改良を加えれば、ナノメートルではなくミリメートルスケールで動作する超高精度センサーへの展開が期待できる。高速回転させれば精密で信頼性の高いジャイロスコープとして機能し、回転を減速して冷却させれば量子の領域まで到達できる。真空中の重力や回転重ね合わせといった量子現象をマクロスケールで研究する上で非常に有望なプラットフォームとして研究チームは特に後者に注目している。

相性のいい産業分野

流通・モビリティ

電車やモビリティに使用できるセンサーへの活用

航空・宇宙

GPSの電波が届かない深宇宙や潜水艦において、摩擦によるエネルギー損失のない超高精度ジャイロスコープによる自律的な慣性航法装置として活用

住宅・不動産・建築

超高層ビルや大規模橋梁の微小な傾き、あるいは地盤のわずかな歪みを常時監視する、超高精度な傾斜計や地震の初期微動センサーとして活用

この知財の情報・出典

沖縄科学技術大学院大学

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 沖縄科学技術大学院大学