No.1147
2026.07.06
世界初、プロ卓球選手と競えるAI搭載ロボットシステム
Ace(エース)

概要
「Ace(エース)」とは、世界初のプロ卓球選手と競うためにソニーAIが設計したAI搭載ロボットシステム。1983年の最初の「ロボット卓球」大会以来、卓球は自律システムにとって挑戦の場となってきた。その後、多くの研究グループがこの分野を発展させてきたが、卓球に求められるミリ秒単位の精度と予測不可能な人間との相互作用は、依然として大きな障壁となっている。Aceは、国際卓球連盟(ITTF)の公式ルールを遵守し、エリート選手に複数回勝利を収め、初めてプロ選手にも勝利した。この研究はAIとロボット領域の研究において長年重要な到達点と続けられてきた「ロボットが現実世界のスポーツ競技で一流のプレイヤーと肩を並べてプレイ」を初めて実現した事例となった。この成果を概説した研究論文「一流卓球選手に勝る自律型ロボット」は、2026年4月22日に発行された国際科学誌Nature(第8110号)に掲載され、表紙を飾った。
なぜできるのか?
高速センサーによる高精度なボールトラッキングを実現
合計12個の高速センサーを用いたハイブリッドビジョンシステムで、これまでにない高精度なボールトラッキングを実現している。ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)のイメージセンサー「IMX273」を搭載した9台のカメラにより高速認識システムを構築し、3次元空間におけるボールの正確な位置を認識する。さらに、SSSのイベントベースビジョンセンサー(EVS)「IMX636」を搭載したカメラとパン・チルトミラーおよび焦点可変望遠レンズを用いた3機の視線制御システムを組み合わせることで、ボールの回転の向きと速度(角速度)をリアルタイムで測定。これにより、直径40mmのボールを追跡し、毎分9,000回転を超えるスピンを測定することが可能となる。事前にプログラムされたモデルに依存しない「モデルフリー強化学習」を用いており、実際のラリーでの予測不可能な動きに適応し、高速かつ高精度な制御が可能な最先端のロボットハードウェアとなっている。
プロアスリートのスピードに対応する設計
プロアスリートのスピードに対応するため、ハードウェアには素早い横方向の動きと正確な打撃に最適化された2つの直動関節と6つの回転関節、ラケットを備えたエンドエフェクタ、ボールを保持するカップが装備されており、片手でのサーブが簡単に実行できる。この設計により、トップスピンやスライスを含む、プロレベルのショットを自在に操るための必要な操作性を実現している。ボールを最大19.6m/sの線速度で返球できるため、プロレベルのラリーや競技レベルのサーブに必要なスピードを可能にしている。
一流選手に対して5戦3勝という結果を残した卓球ロボット
Nature誌で発表された研究成果は、国際卓球連盟(ITTF)のルールに基づいて、Aceと一流卓球選手5人‧プロ卓球選手2人との試合で評価された。Aceは一流選手に対して5戦3勝という結果を残し、残る2戦でも高い競争力を見せた。様々なスピンのボールを打ち返すだけではなく、最大450 rad/s (ラジアン毎秒)の回転数においてもリターン率75%超を安定して達成。これは、競技用卓球ロボットでこれまでに報告されていた値を遥かに上回るものとなっている。サーブでの直接得点(エース)は16回決めており、一流選手がエースを決めたのは全部で8回に留まった。さらに、低遅延認識‧制御システムにより、ネットに当たって不規則に跳ね返るボールなど、予測しにくいショットにも真っ先に対応することができていた。これまでの卓球ロボットでは、その多くが協調的なラリーのみを前提としたもので、対戦でアマチュアレベルを超える性能を示したものはなかった。
対戦下での継続的なパフォーマンス向上
Nature誌に論文投稿後、研究チームは追加の競技試合を実施。2025年12月には、新たに4名の卓球選手(プロ選手2人、一流選手2人)と対戦し、エースは一流選手2人にいずれも勝利し、プロ選手2人に対しては1勝1敗という結果を出した。以前の評価と比較すると、Aceはより高速なショット、台の端を狙ったより攻撃的なコース取り、よりテンポの速いラリーを見せ、対戦下での継続的なパフォーマンスの向上が確認された。
相性のいい産業分野
- スポーツ
プロ選手の変則的な打球や戦術をミリ秒単位で再現し、超一流プレイヤーの打撃対策や戦術構築を支える高度な実戦トレーニングシステムとして提案
- 製造業・メーカー
予測不可能な人間の動きを瞬時に察知・回避しながら、超高速かつミリ単位の精度で組み立てや搬送を行う、完全安全型の協調ロボット分野への展開
- 医療・福祉
患者の突発的な動きや身体能力の回復度合いにリアルタイムに適応し、安全かつ最適な負荷を掛け続ける次世代のインテリジェントリハビリ機器への活用
- アート・エンターテインメント
対峙するプレイヤーの技量をAIが瞬時に見極め、初心者からプロまで誰もが「白熱した試合」を体験できる、未来型の体感エンターテインメント機器の創出
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © Sony AI

