おいしい点字作成そうち

(おいしい点字作成そうちは、小学生を対象に開催された「超・自由研究アワード2020」最優秀賞受賞作品です。)
「おいしい点字作成そうち」は、点字を食べ物の表面に打てる装置。64種類のパターンを表現できる型にアイシング素材を入れることで、”食べられる”点字を出力する。点字ディスプレイや点字タイプライターといった既存の点字作成装置とは異なり、パターンを生み出すための独自のしくみや、3Dプリンティングでの量産が想定された設計が考案されている。おいしい点字作成そうちは単なるユニバーサルデザインに留まらず、美味しい・楽しい、といった付加価値を生む可能性を秘めている。
なにがすごいのか?
- (審査員講評より)
- 「食べ物に点字を打つ」という独創的な発想
- 発想を実現するための新しいしくみや設計の開発
- 最適な結果が得られるまで提案手法の修正を繰り返すプロセス
- 小さい印字面積という制約への考慮
- 食事シーンにおける視覚障害者という具体的なペルソナの設定
なぜ生まれたのか?
「ボールが見えないはずの目の不自由な人が、なぜ競技を行えるんだろう?」
ブラインドサッカーという競技があることを知った小学4年生の遠藤最さん(東京都)は、そんな疑問を抱いた。
それから遠藤さんは、視覚障害者の生活について、より理解を深めるべく調査した。その結果辿り着いたのが「点字」だ。
点字は、視覚障害者とのコミュニケーションツールの一つ。点字を読む人は、指先で点字を左から右へなぞった際の触覚から突起(凸面)のパターンを認識し、規則をもとに点字を五十音・数字・アルファベット等へ変換すること(パターンマッチング)で、何と書いてあるかを読みとる。点字1文字は、マスの中に3行2列で並んだ6つの突起のパターンで表現される。
次に遠藤さんは、身の回りで点字が使われている事例をよく観察することにした。観察する内に、あることに気がついた。それは、駅の券売機には点字があるのに、パン屋のパンには点字がないということ。もしパンに点字があれば、視覚障害者が触れて何のパンなのか分かるし、おまけに食べられる。
遠藤さんはこの発想を実現するため、得意分野の一つである、お菓子作りを活かすことにした。お菓子作りの中で「アイシング」(メレンゲにシュガーパウダーと食用色素を入れて模様を作ること)を使うことがあったが、これで点字を作れないだろうかと考えたのだ。
こうして、アイシングで点字をパン表面に打てる装置の開発が始まった。
64個の型を一つ一つ作るとなると手間がかかり、効率が悪い。
遠藤さんはこれを解決するため、より少ない型で64種類の点字を表現するしくみを考えた。
「改良するとしたら、プログラミングを使って、文字を入れたら自動的に点字の形をつくってくれるようにしたいな、と思います。」
今後の展望について、遠藤さんはそのように語る。
「私の発明を使って、食べ物や色々なところに点字がふえてくれるといいなと思います。」