No.929
2024.10.24
ゼロエネルギーで太陽光・大気からの熱の95%をカットする放射冷却素材
SPACECOOL(スペースクール)
概要
「SPACECOOL(スペースクール)」とは、世界最高レベルの放射冷却性能を有する光学フィルム。太陽光と大気からの熱を95%以上ブロックすることで、ゼロエネルギーで外気温よりも温度低下を実現する。一般的に室温を低温に保つ手段には、熱の伝導を遅らせる「断熱」や、熱の侵入を防ぐ「遮熱」が知られているが、一度上昇した室温をエアコンや扇風機なしで低下させるのは困難だった。一方「SPACECOOL」は、 熱エネルギーを宇宙空間に逃すこと(放射冷却)により、エネルギーを用いずに周囲気温より温度を低下させることが可能。フィルムやマグネットシート、ターポリンなど多様なタイプがあり、日傘や建築物など、多方面での活用が期待される。
なぜ生まれたのか?
SPACECOOL株式会社CTOの末光真大氏は、2012年に大阪ガスに入社し、熱を太陽電池が発電できる波長の光に変換して太陽電池の発電効率を向上させる「熱光発電」を研究。熱光発電の分野で世界最高効率を達成する成功を収めていた。
その後、末光氏は、熱光発電で培った知見を応用し、熱エネルギーを赤外線に変換し、極低温の宇宙空間へ飛ばして物を冷やす「放射冷却」に着目。しなやかさと対象物への貼付、耐久性という3つの課題をクリアした素材「SPACECOOL」を開発した。そして、2021年にSPACECOOL株式会社を創業。放射冷却技術による省エネ性や快適性などを評価する実証実験を開始した。
なぜできるのか?
遮熱機能と放射冷却機能を両立する独自の多層構造
「SPACECOOL」では、独自の多層構造により、太陽光をブロックして熱吸収を抑える遮熱機能(反射率95%以上)と、熱を宇宙に放射する放射冷却機能(放射率95%以上)の両立を実現した。
熱エネルギーの変換と輸送
「SPACECOOL」では、熱エネルギーを、分子振動により「大気の窓」(大気による吸収の影響を受けにくい8-13μmの波長域)の波長域の光エネルギーに変換することで、効率的に熱を宇宙空間へ輸送する。
さまざまな用途への応用を可能にする高耐久性
「SPACECOOL」では、10年以上のUV耐候性(屋外に設置した場合の耐久性)を実現。変色を気にせずに使用できるほか、複数種類のシート形状やフィルム形状など様々な形状により、建築物など、さまざまな用途への応用を可能にした。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © SPACECOOL 株式会社