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2025.11.07
レポート
【DESIGNART TOKYO 2025】レポート―知財ハンターが巡る、“本能美”のデザイン

日本最大級のデザインとアートの祭典「DESIGNART TOKYO 2025(デザイナート トーキョー 2025)」。デザインとアートが交差する10日間の祭典が今年もやってきました。今年は10月31日から11月9日まで都内各所で開催中です。
今年のテーマは「Brave 〜本能美の追求〜」。宇宙産業の副産物から生まれたアップサイクルスピーカー、金属3Dプリンティングによる未来的造形、CCTV映像を再構築するメディアアートまで、多様なジャンルが“本能”の美しさと“美”の本能を刺激します。デザイン、アート、建築、ファッションの垣根を超え、素材・技術・思想が交錯する東京の街に、新たな創造の磁場が立ち上がっています。
知財ハンターが、今年のテーマ「本能美」が溢れる展示物をピックアップしてレポートします。
(取材・文:福島 由香)
Relation Wall | 株式会社大京 x 永山祐子氏
オフィシャルエキシビション「DESIGNART GALLERY」の会場(MEDIA DEPARTMENT TOKYO)では、株式会社大京と建築家・永山祐子氏によるプロジェクト「Relation Wall」が展示されています。このプロジェクトは、電通による企画ディレクションのもと立ち上がり、多数のパートナーと連携しながら、クリエイティブ集団 Konelが壁本体の設計・生産、さらに駆動機構のプロトタイピングや特設Webサイトの制作などを担当、実装パートナーとしてSPLINE DESIGN HUBとA-KAKが参画しています。
意匠と構造を兼ねたモジュールシステムで、しなやかに動く可動式の壁「Relation Wall」は、「人生の価値を高める全く新しい家づくり」をテーマに掲げてプロジェクトが推進されており、住宅の機能だけでなく、人と人との関係性や未来の住まい方を問い直す挑戦的な取り組みとなっています。空間の可能性を拡張する試みとして、会場での展示だけでなく、構造体の動きや仕組み、そしてそこに込められた思想を体感できる展示空間に仕上げられています。
展示情報:『Relation Wall』株式会社大京・THE LIONS
隔てる壁から、繋がる壁へ。
家族の形やライフスタイルが多様化する時代に、間取りはもっと自由になれないか。
『Relation Wall』それは、自由に形を変え、人の関係性をデザインする壁。
家族の関係性を、もっと豊かにするために。住まいから、価値ある人生を叶えるために。
壁は、しなやかに動きはじめます。
(特設HP)
会場
MEDIA DEPARTMENT TOKYO 1F (東京都渋谷区宇田川町19-3)
会期:10月31日(金) - 11月9日(日) オープン時間:10:00 - 19:00
「Relation Wall」は、建築、デザイン、テクノロジーなど、多分野のプロフェッショナルが結集し、それぞれの専門性が緻密に響き合うことでこの作品が成り立っている点も見逃せません。
Orbit of Calm | 130 OneThirty / 加藤 大直
DESIGNART TOKYO 2025において、「130 OneThirty」は、大型ランプとチェアを展示しました。「130 OneThirty」は、部分的な破損があっても修復・修繕が可能な設計が特徴です。
ブランド名「130 (OneThirty)」の素材は、展示後に粉砕して再ペレット化され、次の造形に再利用されるとのこと。つまり「130 → 粉砕 → 0 → 130」という再素材化のプロセスを繰り返すことが、プロジェクト名の由来にもなっています。製品が不要になったり部分的に壊れたりした際に、粉砕しペレット状にして再素材化(0に戻す)する「1→3→0(粉砕)→ペレット化し再素材化」のサイクルを繰り返すことに由来しています。
大型ランプは、約150kg〜200kgの過重に耐える強度を持ちながら、中央から外側へ放射する「一点透視パース」のグリッド構造に基づき、光線が広がるような構成美を視覚的に表現。
現代の「使い捨て」文化への強い問いかけ。物が壊れたからとすぐに新しいものに買い替えるのではなく、定期的な補修や金継ぎに似た手法で部分的に色を変えるなど、手を施すことで価値を存続させることを目指します。、「物と人との関係を絶えず継いでいく」という理念を実践し、長く愛用されるための耐久性と修復の仕組みがデザインに深く組み込まれています。
展示期間:2025年10月31日(金)〜11月9日(日)
営業時間:10:00〜19:00
会場:MEDIA DEPARTMENT TOKYO / 東京都渋谷区宇田川町19-3
入場:無料
https://www.designart.jp/designarttokyo2025/exhibitions/10868/
DEBRIS | 乃村工藝社 noon by material record x &SPACE PROJECT
宇宙産業の開発過程で生まれたロケット燃料タンクの廃材を用いたスピーカー《DEBRIS》。乃村工藝社 noon by material record と &SPACE PROJECT の共同制作による本作は、機能性とデザイン性を高次元で両立させたアップサイクル事例であり、多くの注目展示が集まるMEDIA DEPARTMENT TOKYOの3階にて出展されています。
外観はミニマルながら、音響と造形の設計には工業技術とデザインの細やかな対話が見られます。再利用されたアルミ素材の質感を活かし、無指向性スピーカーとして音を360度に広げる構造を採用。音楽体験を通して、観る者に“モノが辿った時間”を語りかけます。
本作で流れるサウンドには、ロケットの生まれ故郷である北海道・大樹町の風や波、ビーコン音などを収録し構成された楽曲が使用されており、素材の来歴と結びつく「音の記憶」が作品体験として昇華されています。まるで「空を飛ぶはずだったロケットの記憶が、自らの声で語りかけてくる」ような演出となっています。
エリア:渋谷
会場名:DESIGNART GALLERY
住所:東京都渋谷区宇田川町19-3 MEDIA DEPARTMENT TOKYO
会期:10/31 - 11/9
時間:10:00 - 19:00 (最終日のみ16:00まで / 最終入場時間15:01)
https://www.designart.jp/designarttokyo2025/exhibitions/11256/
金属3Dプリンタが紡ぐ世界 | 三菱電機 統合デザイン研究所
三菱電機 統合デザイン研究所は、デジタルと工芸の融合を模索する実験的プロジェクトとして「金属3Dプリンタが紡ぐ世界」を展示しています。今回用いられた金属3Dプリンティング技術は、従来の金型では再現が難しかった形状を、積層造形によって自由に生成したり、材料を一層ずつ積み重ねることで形状を造形する積層造形技術を基盤とし、精緻かつ立体的な形状を再現しています。
このプロジェクトでは、3次元プリントされた立体的な鍵もデザイン。出力された金属オブジェクトは、独自の構造と美的感覚を持ち合わせながら、実際に可動する“開けられる鍵”として成立しています。本プロジェクトは特許も出願済みとのこと。その技術的独自性と将来的な展開の可能性がうかがえます。加えて、その構造データはデジタル上で保存され、プリンタで何回出力されたかという記録までが追跡可能な仕組みとなっています。
このような「かたち」と「記録性」の組み合わせは、3Dプリンタの出力回数といった情報をセキュリティや唯一性の観点からも活用できることを示唆しています。
エリア:渋谷
会場名:DESIGNART GALLERY
住所:東京都渋谷区宇田川町19-3 MEDIA DEPARTMENT TOKYO
会期:10/31 - 11/9
時間:10:00 - 19:00 (最終日のみ16:00まで / 最終入場時間15:01)
https://www.designart.jp/designarttokyo2025/exhibitions/10854/
siro exhibition 02 / は、回る | siro
siroによる展示《siro exhibition 02 / は、回る》では、「回転」という行為がもたらす物理的・感覚的な変化をテーマに、多様な視点からの表現が展開されていました。出展作品はすべて「回る」ことを軸に制作されており、空間のリズムや知覚のずれ、循環の連鎖といった現象が、光・音・機構・映像・インタラクションを通じて立ち上がっています。
たとえば、水の重さによって回転と停止を繰り返すインスタレーションでは、回転の速度や重力のバランスがデザインに巧みに取り込まれており、自然現象と人工構造のあいだを行き来するような感覚を観客に与えます。実際に「止まったり、また回り出したり」という時間差のある動きが、空間に呼吸するようなリズムを与えていました。
また、展示空間全体も回転というモチーフを共通項として構成されており、観る者の身体感覚を揺さぶる設計となっています。単なる視覚的体験ではなく、「時間」と「動き」を通じた拡張的な知覚の共有は、まさに現代都市における新たな身体感覚を問うインスタレーションでした。
エリア:六本木
会場名:AXISビル B1F-B121&122
住所:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル B1F B121
会期:10/31 - 11/9
時間:11:00 - 19:00 (10/31のみ13:00 - 19:00)
https://www.designart.jp/designarttokyo2025/exhibitions/10855/
siro展 第二回 「は、回る」 を開催します(松山 真也氏 note)
これらの作品の数々は、「DESIGNART TOKYO 2025」で実際に目にしたり体験したりが可能です。 日本最大級のデザインとアートの祭典「DESIGNART TOKYO 2025(デザイナート トーキョー 2025)」は11月9日(日)まで。年に一度のデザインとアートの一大イベントに、興味のある方はぜひ足を運んでみては。
DESIGNART TOKYO 2025 開催概要
テーマ:「Brave 〜本能美の追求〜」
会期:2025年10月31日(金)〜11月9日(日)の10日間
エリア:表参道・外苑前・原宿・渋谷・六本木・銀座・東京出展者数:130組 / 会場数:91会場 ※入場無料(一部の展示を除き)
主催:DESIGNART TOKYO 実行委員会
発起人:青木昭夫(MIRU DESIGN)/川上シュン(artless)/小池博史(NON-GRID)/永田宙郷(TIMELESS)/アストリッド・クライン(Klein Dytham architecture)/マーク・ダイサム(Klein Dytham architecture)
オフィシャルウェブサイト: https://www.designart.jp/designarttokyo2025/
Top Image : © 株式会社デザイナート


