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2021.10.21
レポート | 体験レポート
知財ハンターが注目する「CEATEC AWARD 2021」受賞テック5選
NEC 日本電気 株式会社
CEATEC 2021 ONLINEのスローガンは、昨年に続き「CEATEC - Toward Society 5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩むCEATEC)」。コロナ禍を経て大きく変化した社会におけるSociety 5.0実現するために「カーボンニュートラル」「スーパーシティ&スマートシティ」「モビリティ」「5G」の4つが特に重点テーマとなっており、これらに沿ってさまざまなカンファレンスも開催されました。
本年で11回目を迎える「CEATEC AWARD 2021」の結果発表も10月18日(月)に行われ、CEATECに展示される技術の中から、出展者が事前に応募した出展品・案件について審査委員会が学術的・技術的観点、市場性や将来性等の視点から、イノベーション性が高く優れていると評価できるもの表彰されました。
本レポートでは、受賞した中で知財ハンターが着目したテクノロジーを5つ紹介します。
NECが目指す未来のまち ~スーパーシティ~The Smart Cities NEC Aims To Create: Super Cities(NEC/日本電気株式会社)
◯総務大臣賞 スーパーシティ/スマートシティ部門 グランプリ
【概要】「NEC都市OS」はスーパーシティ・スマートシティ向けのデータ連携基盤として活用する基盤ソフトウェア「FIWARE(ファイウェア)」やNEC独自のAI・生体認証技術などのアセットを組み合わせ、自治体が保有するデータをはじめとしたさまざまなデータと住民に提供する行政サービスなどの効率的な連携を実現するサービス群を体系化することで、人々が安心して活き活きと暮らし続けられるまちへの進化に貢献する。
未来のスマートシティで想定される、先端的なサービスの提供に必要になるであろう共通機能を実現するクラウドサービス「都市OS」の構想です。これにより・観光・医療福祉・防災など複数分野にわたる行政サービスの効率化が期待できます。NECのAIを活用することで、顔認証をはじめとする生体認証や個人認証、ID連携管理機能を低コスト・短期間で実装することが可能になるとのことです。NEC未来創造会議の構想する新時代のネットワーク“エクスペリエンスネット”とも通じる、新しい社会の在り方の基盤をつくるビジョン・総合力と、複数の自治体を支援して来たNEC実績が評価されました。
Non-Terrestrial Network構想 グローバルに展開する宇宙・成層圏通信(ソフトバンク株式会社)
◯ソリューション部門 グランプリ
【概要】宇宙空間や成層圏から通信を提供するNon-Terrestrial Network構想は、宇宙空間からは静止軌道衛星のSkylo、低軌道衛星のOneweb、成層圏通信プラットフォームを提供するHAPSです。これらのサービスを提供する非地上系ネットワーク(NTN)をグローバルに展開を推進していきます。
今では世界中のあらゆる人々・場所とインターネットでつながり、さらにIoTの普及により、あらゆる場所であらゆるデバイスとつながれることがスタンダードになってきています。そんなコミュニケーションのニーズと多様性が高まる中、このソフトバンクの取り組みによりインターネット社会における「圏外」をなくすことができるようになるかもしれません。衛星データプラットフォームの「Tellus(テルース)」などとも組み合わせると、さらにビジネスの幅や網羅性が広がっていきそうです。すでに2022年からは商用サービスの導入も予定されており、早期運用に向けた実装のロードマップも評価ポイントだったようです。
「健聴力」で、あなたと世界をつなぐ。メディカルリスニングプラグ(シャープ株式会社)
◯要素技術・デバイス部門 グランプリ
【概要】メディカルリスニングプラグはワイヤレスイヤホンスタイルの軽度・中等度難聴者向け耳あな型補聴器で、主な特長は以下のとおり。①管理医療機器の認証を取得。補聴器としての性能・品質・安全性を備えながらリーズナブルな価格を実現、②スマホと連携し、自宅にいながらフィッティングからアフターサービスまでをプロがワンストップでサポート、③ワイヤレスイヤホンのように音楽鑑賞ができ、ハンズフリー通話にも対応。
「医療機器認証」を取得していながらもリーズナブル、そしてデザイン性の高いスタイルが特徴のワイヤレスイヤホンです。コロナ禍における軽度・中等度難聴者の「口元が隠れるようになってしまい、何を話しているか分かりづらくなった」という悩みの声が、開発背景のひとつだったようです。また、ソーシャルディスタンスの確保・オンライン会議の推奨・パーテーションの設置なども、難聴者の会話の聞き取りづらさを際立たせる要因になりました。メディカルリスニングプラスはそんなビジネスシーンにおける軽度・中等度難聴者の課題を払拭できるイヤホンとして注目されています。アプリによる微細なモードコントロールや、リモートで対応可能なフィッティングケア、ワイヤレスイヤホンとしての機能性も評価されたポイント。日常使いがしやすい設計・デザインにすることで利用頻度を高めてもらうというアプローチは、東京大学が開発した人工喉頭「Syrinx」にも通じるコンセプトだと感じました。
極軽量/省電力エッジAIアルゴリズム MST(Memory Saving Tree)(株式会社エイシング)
◯スタートアップ ユニバーシティ部門 グランプリ
【概要】ARM社Cortex-Mシリーズレベルのマイコン上でも動作可能な(メモリサイズは数KB~)エッジAIアルゴリズムであり、「Cortex-A」「Cortex-R」「Cortex-M」が推奨実装範囲(ARMカバー率92%)。超軽量/超省電力AIなだけではなく、高い予測精度と高速応答も実現している。また、AIをエッジ側へ実装後もスタンドアローンでの逐次学習が可能。
株式会社エイシングによる、AIの可能性を広げる独自アルゴリズム・MST(Memory Saving Tree)。メモリ要求が低くかつ高精度で追加学習に対応しており、産業用を始め個体差補正など多岐にわたる分野で応用可能な点が注目です。センサーなどにAI機能を付与できるエンドポイントAI(端末側だけで処理を完結するAI)を具現化する技術であり、産業・工業における技術課題の解決から、暮らしの中のIoTデバイスまであらゆる場面で応用されるソリューションとなりそうです。
フィルム型ペロブスカイト太陽電池(株式会社東芝)
◯経済産業大臣賞 /カーボンニュートラル部門 グランプリ
【概要】日本での再生エネルギーの主電源化にむけて、太陽電池の設置場所の不足という課題がある。フィルム型ペロブスカイト太陽電池は軽量薄型、フレキシブル性を特徴とし、シリコン太陽電池の設置が困難だった都市部などの多様な場所への大幅な利用拡大を可能とする。独自の成膜方法を開発し、フィルム型大面積ペロブスカイト太陽電池モジュールとして世界最高のエネルギー変換効率の15.1%を達成し、実用化に大きく前進した。
CEATEC開催前にも知財ハンターが注目していた、東芝のフィルム型ペロブスカイト太陽電池が2部門で受賞。軽量で柔軟性がありながら高効率な発電を可能としており、従来では設置できなかった場所や曲面、窓などあらゆる場所に設置することで、再生可能エネルギーの比率を上げることが期待されています。同じくフィルム型の知財として、ガラスやアクリル板を照明に変えるフィルム「RAYCREA(レイクレア)」や、蛾の眼を模倣した反射防止フィルム「モスマイト」などと組み合わせてみると、今までにないデザイン設計の設備やカーボンニュートラル社会が実現しそうです。
以上、知財ハンターが注目した「CEATEC AWARD 2021」受賞テクノロジーでした。CEATECメインイベントは10月22日(金)まで開催、興味のある方はオンライン展示会場を訪れてみてはいかがでしょうか。