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2024.10.25
レポート
【Dutch Design Week 2024】知財ハンターが巡る、ダッチ・デザインウィーク 現地レポート
株式会社 知財図鑑
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2024年10月19日(土) 〜 10月27日(日)にオランダ・アイントホーフェン市内で行われていたDutch Design Week 2024。本記事では現地に訪れた知財ハンターが、周遊のヒント展示についてピックアップしてお届けします。
ダッチ・デザインウィーク(Dutch Design Week)とは
北ヨーロッパ最大のデザインの祭典とも言われるダッチ・デザインウィーク。開催地であるアイントホーフェンは、南オランダ最大の都市で、フィリップスなどの大企業が本社を据えるオランダ有数の工業都市です。開催期間中は市内各地で展示会、ワークショップ、セミナー、パーティー等が行われていました。
◯周遊のヒント
ダッチデザインウィークは公式Webサイトやマップがしっかり作り込まれているため、初めてでも周遊しやすいです。
会場は基本的に11時〜18時オープンです。期間中は展示のほかに、ワークショップやトークセッション、夜のイベントなど豊富なので、事前にチェックしておくことをお勧めします。
◯エリアについて
大きく分けて東・西・センターの3つに分けることができます。
東に位置するエリアB(STRIJP-S)がメイン会場とも言えるくらい展示が密集しており、1日目はここを回るだけで時間を使い切りました。エリアA(STRIJP T+R)やエリアC(Next Future Museum)も徒歩圏内です。
センターは展示が点在しているので、街歩きを楽しみながら回ることができます。
西側に位置するエリアH(SECTIC-C)は他の会場から離れているため、バスか車のサービスを利用することをお勧めします。
◯移動手段
コンパクトにまとまっているため、徒歩やバス、自転車で移動が可能です。
レンタサイクルや車のサービスも充実しており、センターエリアからは少し遠いSECTIC-Cに行く際に便利でした。
◯チケット
期日前までに公式サイトでチケットを購入しておくと、安く購入することができます。もちろん当日チケットカウンターでも購入可能です。オンラインで購入した場合は、チケットカウンターでリストバンドに交換してもらいましょう。
ハイライト
ここからは、訪れた中でいくつかピックアップしてエリアや展示を紹介していきます。
Wind Knitting Factory
https://www.merelkarhof.nl/work/wind-knitting-factory
風力で動く編み機「Wind Knitting Factory」も展示されていました。風の力でマフラーを編むことができる機械で、その場で購入も可能です。この移動できる風力ニット工場は、都市の風を使って持続可能に生産できるプロセスを視覚的に示しています。
POND (Power Of Nature-based Design)
POND (Power Of Nature-based Design) は、自然の力を使ったデザインの屋外照明インスタレーションです。水の健康状態を測定し、日没後にその状態を色の投影で表現しています。このインスタレーションは、微生物燃料電池技術(Microbial Fuel Cell)を利用し、水自体がエネルギー源となり、微生物によって発電される仕組みになっています。
CircleFarming
CircleFarmプロジェクトは、新しいオランダの景観デザイン「フードスケープ」(食の風景)や、農業に貢献することを目指して始まったプロジェクトです。CircleFarmingは、限られたスペースをより効率的に管理できる農業の形態として、従来の単一作物を育てる長方形の畑ではなく、様々な作物を円形に配置したストリップ農法を起用しています。今年の展示では、Wageningen University & Research (WUR)と共同で実験が実施され、ロボットアームが開発された様子を見ることができます。
MATCHA
日本からは博展のExperiential Design Labが、MATCHAというタイトルで出展していました。Air's Furnitureという、仮設の可能性を広げ、持続可能で新しいコミュニケーションスペースの可能性を探るプロジェクトの一環です。本来の抹茶を気軽に楽しんで欲しいという想いのもと、大きな茶箱を活用した抹茶スタンドを仮設し、立ち寄った方に抹茶を振る舞っていました。伝統的には茶葉の保存や運搬に使われてきたこれらの茶箱を、世界中どこへでも持ち運べるポータブルな箱として再設計しています。
イベントや体験づくりの知見を活かしたHAKUTENならではの視点と日本文化が組み合わさった空間でした。
Class of 24
オランダやその周辺の国のさまざまな大学のデザイン系のコースの卒業制作が集まった「Class of 24」。その場で学生とも会話できるので、ヨーロッパ留学に興味のある人には非常におすすめです。
そこからさらに奥へ進んだところにあるservice&innovative / speculation&socialのエリアでは、テクノロジーを活用した展示が多く並んでいました。
Drivers of Change
アイントホーフェン工科大学による、技術・研究・デザインを統合したプロジェクトが展示されていました。思考だけでコンピュータを操作できる技術や、誰でも簡単に作曲ができるマシンなどを体験することができます。
Dutch Design Awards 2024
20年以上続くDutch Design Awards (DDA) が開催されており、訪れた人が投票できる仕組みになっていました。2024年はDDAの豊かな歴史に焦点を当て、過去と現在の若手デザイナーが取り上げられていました。
Loop Living Cocoon
Respyre
Respyreは、どんな垂直の壁や建物でも苔を育てられる技術です。古い建物の壁に苔を育てることができるものや、苔を育てるためのパネルを使って新しい建物を作ることもできます。
Graduation Show 2024
会場となるアイントホーフェンにある大学、デザイン・アカデミー・アイントホーフェン(DAE)の卒展も見応えがありました。学部生と大学院生の卒展が集まっていたため、会場は建物全体に加えて地下駐車場も会場になっていました。
World Design Embassies
World Design Embassiesは、デザインの力を活用して、社会的課題に対して新たな視点や具体的な方向性を探求する取り組みです。大使館ごとに展示が行われており、政府がデザインの力を信じて積極的に推進していることに感銘を受けました。
おわりに
日本ではまだあまり知名度の高くないダッチ・デザインウィークですが、これからの素材やテクノロジーのあり方、社会とデザインの関わりなどをさまざまな視点でみることができました。政府や街全体がデザインの力を信じてプロジェクトを推進していることも肌で感じ、サステナブル、ソーシャルデザインに関連するデザインはもちろん、アートやクラフトの展示も豊富で、参加者自身が関われるワークショップやイベントも行われているため、幅広いデザインに触れることができます。また、オランダ国内外の大学の展示がたくさん見れることも、ダッチ・デザインウィークの魅力の一つではないでしょうか。
▼取材・文
加藤 なつみ
知財図鑑 知財ハンター。大学・大学院では感性工学を専攻し、修了後にクリエイティブカンパニー・Konelに参画。プロデューサー / UXデザイナーとして、感性を中心に据えた体験設計を軸に、地域から海外、ブランディングからR&Dまで、多岐にわたるプロジェクトを担当。感覚拡張による感性拡張、文化と美意識、自然、愛着がキーワード。
「Milan Design Week 2024 レポート」「ヴェネチア・ビエンナーレ2024 レポート」も併せてご覧ください。
▶︎Milan Design Week 2024 〜日本の挑戦〜 (前編)はこちら
▶︎Milan Design Week 2024 〜日本の挑戦〜 (後編)はこちら
▶︎Milan Design Week 2024 〜世界のものづくり編〜 はこちら
▶︎知財ハンターが巡る「ヴェネチア・ビエンナーレ 2024」 の歩き方 はこちら