No.1227

ワサビ成分「6-MSITC」で歯の象牙質を再生

ワサビ由来成分で歯の再生

ワサビ由来成分で歯の再生

概要

「ワサビで歯の再生」とは、東京歯科大学が産学連携で、ワサビの成分である6-MSITC(ヘキサラファン)が、歯の象牙質形成を促進する能力があることを明らかにした。6-MSITCは、象牙質を形成する細胞である象牙芽細胞の様々なイオン輸送メカニズムを介した重炭酸イオン・水素イオン・ナトリウムイオン・カルシウムイオンの輸送を連続的に活性化させることができる。このような象牙芽細胞の細胞膜イオン輸送の連続的活性化が、6-MSITCによる象牙質形成を強く誘導することが示された。この研究は、新たな象牙質再生治療の有望かつ強力な薬物候補物質と考えられ、国内外において特許が出願されている。

なぜできるのか?

ワサビの成分「6-MSITC」と象牙質形成の関係に着目

歯は、外側のエナメル質、その内側の象牙質、さらに内部の歯髄などから構成される。象牙質には象牙細管と呼ばれる複数の細い管があり、象牙質表面を刺激すると、この象牙細管の中にある液が移動する。象牙質を形成する細胞である象牙芽細胞がこれを感知し、歯痛(象牙質痛)が発生する。現状の対処法としては、象牙質の表面を保護するなどがあった。東京歯科大学の研究チームは、6-MSITCと象牙質形成の関係性に着目し、6-MSITCが強い象牙質形成能力・再生能力があることを明らかにした。

イオンの輸送が活性化することで、短期間で象牙質形成を促進

6-MSITCは、象牙芽細胞内で炭酸脱水酵素を活性化し、重炭酸イオンと水素イオンの生成を促進する。生成されたこれらのイオンは細胞外へと輸送されると同時に、ナトリウムイオンとカルシウムイオンの細胞内外輸送が連携して促進される。その結果、象牙芽細胞外のアルカリ性環境が形成され、カルシウムイオンの細胞外輸送が生じることで、石灰化が促進し、象牙質が再生される。研究チームは、このようなイオン輸送メカニズムを介した重炭酸イオン・水素イオン・ナトリウムイオン・カルシウムイオンの輸送活性が、短期間で象牙質形成を促進することを示した。これにより、象牙質を再生可能な新規歯内療法用薬剤として応用できる可能性が示された。また、新たな象牙質再生治療の有望かつ強力な薬物候補物質と考えられ、国内外において特許が出願されている。

象牙芽細胞を用いて6-MSFITCの石灰化能力を評価

研究チームは、培養ヒト象牙芽細胞を用いて象牙質形成を評価した。6-MSITCと、6-MSITCから化学構造を変化させた7つの化合物における象牙質形成能の指標となる石灰化能力を評価したところ、6-MSITCと7つの化合物の1つである6-MSFITCが象牙芽細胞の石灰化を特に促進させた。さらに、象牙芽細胞による6-MSITCで誘導される石灰化は、炭酸脱水酵素阻害薬、細胞膜カルシウムイオンポンプ阻害薬で抑制され、両者を同時投与するとその抑制効果は増強した。また重炭酸イオン輸送体(SLC4A ファミリー)阻害薬も 6-MSITC 誘発性の石灰化を有意に抑制した。この結果から、6-MSITCによる石灰化促進には象牙芽細胞内での重炭酸イオン生成、重炭酸イオンの細胞外輸送および細胞膜カルシウムイオンポンプ(PMCA)を介したカルシウムイオンの細胞外排出が関連している可能性が示唆された。

ラットの歯で象牙質形成や象牙質石灰化の促進を確認

ラットの歯を使用した実験を実施。ラットの臼歯に窩洞を形成し窩洞内に6-MSITCを投与した。その結果、投与していないコントロール群と比較して、投与した群は新生コラーゲン形成、象牙質形成、象牙質石灰化の促進が観察された。

相性のいい産業分野

医療・福祉

虫歯治療や歯の修復を支援する新規歯科材料・薬剤への応用

この知財の情報・出典

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