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2024.06.21
レポート | CHIZAI YOUTH
【SusHi Tech Tokyo 2024】先端技術の展示で未来の東京を体験─ショーケースプログラムレポート
未来の都市モデルを国内外に発信するイベントとして、4月26日~5月26日にかけて東京ベイエリアで行われたSusHi Tech Tokyo 2024(スシテック東京)。SusHi Tech Tokyoとは、世界共通の都市課題解決に向けて東京発のイノベーションを創出し、未来の都市モデルを発信する国際イベントです。①世界五大陸の都市のリーダーが集う「シティ・リーダーズプログラム」、②アジア最大規模のスタートアップイベント「グローバルスタートアッププログラム」、③未来の都市モデルを発信する「ショーケースプログラム」の3つの催しが同時期に開催されました。
本記事では、日本科学未来館、シンボルプロムナード公園、海の森エリア、有明アリーナの4つの会場で行われた体験型の「ショーケースプログラム」の展示から、“2050年の東京”を体感できるプログラムに実際に訪れた知財図鑑のインターン「CHIZAI YOUTH」達が気になるテクノロジーをピックアップしてご紹介します。
海の森エリア
海の森エリアでは、次世代モビリティ“空飛ぶクルマ”の都内初飛行の祭典が開催されました。米国LIFT AIRCRAFT社が製作した一人乗り型の空飛ぶクルマ「HEXA」の都内初飛行デモが行われ、会場は大盛況。搭乗できる機体「HEXA」は18枚のプロペラで人ひとりを乗せて飛行が可能です。飛行の挙動は非常に安定しており、未来の移動手段としての可能性を強く感じました。
一人乗り電動垂直離着陸機"HEXA"の実証試験としてデモ飛行を実施。都内を初飛行する祭典には、大勢の取材陣が詰め掛けました。
出展:丸紅株式会社
初日の東京都内初飛行・開幕セレモニーには東京都知事の小池百合子氏も登壇し、「最先端の技術をより多くの人に体感してもらいたい。空飛ぶクルマが移動の手段になるのを楽しみにしている」と述べました。Photo©︎: Yuka Fukushima
有明アリーナ
有明アリーナ会場では、2050年の東京にタイムスリップした設定で、未来の生活を予感させるさまざまな分野の展示があり、「衣食住」「買い物」「乗り物」など多彩なテーマの展示が行われました。
デジタル技術で衣料ロスを削減『未来アパレル』
「未来アパレル」は、衣服を3Dデジタルでデザインして、デジタル販売することで、衣料ロスを減らすサステナブルファッションサービス。従来のアパレルでは、デザインからサンプルの完成、販売までの試行錯誤の間に、時間や材料が多大にかかっていました。「未来アパレル」では、3D上で何度でもリデザインが可能で、テストマーケティングによって需要量を測り、デジタル店舗において、人々がアバター上で試着・購入するために、必要量に応じた生産が可能になります。
イベントでは、AIの合成技術を使って、実際にデジタル上の試着ができる体験がありました。ブースの前のWEBカメラで顔写真を撮影し、好みのルックに合わせて試着ができます。
将来的には、既存のブランドの衣服の販売だけでなく、メタバースやゲームの世界の服の購入や、NFTでのデジタル販売など、リアルとデジタルの境目を行き来する販売モデルとして活用されるでしょう。(杉浦)
巨大ロボ『ARCHAX』(アーカックス)
ツバメインダストリが開発した巨大ロボの「ARCHAX」(アーカックス)実機の動く様子を見ることができました。電波トラブルによりデモンストレーションは見られませんでしたが、人ひとりが搭乗できるコックピットと、アーカックスそのものの大きさと異質さは圧巻でした。 初期ロットは1台4億円・限定5台で販売されるとのことです。(小柳)
「ARCHAX」の駆動の時には、大勢の来場者が撮影のために詰め掛けました。
ARスポーツ「HADO」
株式会社meleapが手がけるARスポーツの「HADO」を体験できました。ARゴーグルと腕にセンターを装着し、AR上の波動の弾をぶつけ合って対決する対戦型のドッジボールのような競技ですが、特定の動きをすることで盾を出して相手の球を防ぐことができるなど、戦略性の高いルール設計と身体の動きとの連動性に驚きました。HADOは現在、日本のみならず海外にも体験のできる店舗があり、今後のARスポーツの発展により、世界各地の方たちと対戦などもできるかもしれないと感じました。(小柳)
日本科学未来館
日本科学未来館では想像力を刺激するテクノロジーや、サステナブルな取り組みなど、 東京の暮らしを変える多様なテクノロジーが展示されていました。
キッズウォーカー・サイクロプス
両腕を動かしたり、ペダル操作で移動したりできる乗用ロボットです。操作は非常に簡単で、コックピットに搭乗して自分の腕を動かすと、連動してロボットのアームが動きます。自分自身の動きが拡張している感覚を味わえ、とても新鮮な体験でした。 こちらを製作した榊原機械株式会社、同社は他にも3m級の2足ロボットや、8m級のロボットなども作っている会社。「子どもでも気軽にロボットの操縦体験をしてほしい」とのことでした。 (小柳)
今回搭乗したロボットのキッズウォーカーサイクロプス
自動車変形ロボット「ファイバリオン」
アニメの世界から飛び出した、身長2メートルを超える等身大ロボット「ファイバリオン」は、現実世界でその姿を具現化したロボットです。勇者技術研究所が開発した「ジェムストンフレーム(GSフレーム)」を内部構造として持つ一号機であり、各部にドッキングポイントを備えており、アシストツールの装備や合体メカとの合体によるパワーアップが可能です。専用グローブを装着して指を動かすと、一本一本が精巧に動く仕様となっており、自動車型に変形しての移動も構想されています。
全体の高さは約2.5メートル、重量は約200キログラムで、1名が搭乗可能な完全自動変形を実現しています。フレーム材質にはアルミニウム合金とスチール合金、外装材質にはPLA樹脂とアクリル樹脂が使用され、小型軽量で薄型のアクチュエータを独自に開発しています。操縦席に座り、離れた場所からロボットを動かす体験が可能でした。(須賀)
ミカクミライクイズ
味覚をコントロールしたり、新しい食べものができたりする最新テクノロジーが集結し,展示では味の違うチョコレートを食べ比べることで自分の味覚力をチェックする「味覚検定チョコ」や、電気の力で塩味・うま味を増強する「エレキソルトスプーン」が展示されていました。
味の違うチョコレートを食べ比べることで自分の味覚力をチェックする「味覚検定チョコ」
電気の力で塩味・うま味を増強する「エレキソルトスプーン」
また,山形大古川研究室で開発されている「フード3Dプリンター」などが展示されていました。レーザー加熱式のフード3Dプリンター、ソフトロボティクスと組み合わせた動く寿司といったものが展示されていて、近い将来には3Dプリンターを用いた食事や新たな料理の作り方が生まれると感じました。(小栁)
レーザー加熱式のフード3Dプリンターのデモ映像
ソフトロボティクスとフード3Dプリンターを組み合わせて作られた動く寿司「スシニギリス」たち
おわりに
「未来の都市モデルを発信する」とだけあって、未来技術が幅広く展示され、見るだけでなく実際に体験できるコーナーも充実していました。会場には子供たちや海外からの来場者も多く見受けられ、その多様性がイベントの魅力をさらに高めていたように思います。
訪れた人々は最新のテクノロジーに触れながら楽しく学ぶことができ、このようなイベントは世代や国籍を超えて多くの人々に未来の可能性を感じさせる貴重な機会だと感じました。
取材・文:杉浦 万丈、小栁 碧羽、須賀 優海/CHIZAI YOUTH
編集:福島 由香