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知財図鑑関連アワード受賞知財

2022.06.03

卒論 OPEN AWARD 2022【入賞論文特集】

卒論OPEN AWARD 2022 入賞論文特集

学生たち自らが卒論を公開し、研究室に埋もれがちな素晴らしい論文が世の中に見つかりやすくなることを目指し開催した「卒論 OPEN AWARD 2022」。知財図鑑編集部、知財ハンター、特別審査員陣による厳正な審査の結果、最優秀賞・優秀賞・審査員特別賞を受賞した5名の研究論文を「知財」として知財図鑑で紹介します。

最優秀賞

読んで味わう「和菓子図像学」の研究

受賞者:糸井 康子/早稲田大学 文化構想学部 表象・メディア論系 卒業論文全文はこちら

midashi itoi

〈研究概要〉
和菓子を「読む」楽しみを和菓子の食体験の一つとして再現する「和菓子図像学」の提案と、「和菓子図像学かるた」の制作を実施。和菓子図像学研究とは、宗教画などに伝統的に現れるモチーフと寓意を読み解く「図像学」を和菓子を主題に応用した研究。和菓子の色や形、構造からその物語を解読することを目指し、遊びながら和菓子図像学を習得できるかるたを制作した。(卒論 OPEN AWARD 2022 最優秀賞)
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▼研究のきっかけと内容について

●研究に取り組んだきっかけは何だったのでしょうか?
友人と共に和菓子を目の前で仕上げて提供してくれるお店に行った際、和菓子の構造とその色や形の意味に関連性があることを知り興味を持ちました。和菓子の意匠には抽象的な表現が多く、その構造の特徴に注目すると、年中行事や伝統的な習わしにまつわる暗喩的なモチーフを抽出し分解することができることに気付きました。このように私自身は偶然興味を持ったものの、知識なしに背景情報との関連性を想起することは難しく、再現性に課題を見つけました。そこで特徴的な物語を持つ和菓子を収集し、色や形の構造と背景情報の関連性を反映するモチーフを制作し、寓意を推測できるツールの開発を試みました。

それぞれの和菓子から主題として取り上げる物語(読み札)を抽出し、その内容を抽象的なモチーフ(変換)に変換することで、双方向的に情報を推測することができる「和菓子図像学かるた」を制作しました。和菓子を「読む」楽しみを和菓子の食体験の一つとして提案するために、楽しみながら和菓子図像学に入門することができるツールの制作と研究に取り組みました。

●この研究によりどんな変革・進歩が期待できるでしょうか?
和菓子を「読む」楽しみが味わい方の一つとして加わることで、和菓子の食体験が拡張され、興味の入り口や生活との接点がより豊かに開かれることを期待しています。和菓子は伝統的な食文化であるとともに、地域の行事や習わしに基づき多様な特色を育み、材料や形状には共通項を残しながらも、歴史的背景や地理的条件の変遷をも反映する大変多層的なメディアであると感じます。本研究が制作した「和菓子図像学かるた」は、教育現場での食育や、異文化コミュニケーションにおける導入ツール、地域理解や交流のきっかけとして幅広く活用できるのではないかと考えています。

読んで味わう和菓子図像学の研究_TOP画像

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▷「読んで味わう和菓子図像学」の知財記事はこちら

優秀賞

優秀賞、審査員特別賞に選出された4名の研究論文も知財図鑑に掲載します。下記より記事や論文がご覧いただけます。

トロッコ問題における多角的考察

受賞者:太田 真爾/桐蔭学園高校 高校3年論文全文はこちら

midashi ohta

本稿では、トロッコ問題という倫理的ジレンマを通して「我々は今まで命をどういった認識で捉え、どう考えれば適切な倫理観と正義感を持つことができるのか」という命題に主眼を置いて探究した。そのうえで著名人の考えを挙げ、人工知能を搭載した自動運転技術などを検討する。その模索で得た過程を、先進国と開発途上国における医療体制の比較に繋げた。最後は大澤真幸氏の考えを挙げ、現実の難しさを対比構造的に考察した。また、多様な考えやデータを挙げることで議論が一辺倒とならぬよう配慮した。(卒論 OPEN AWARD 2022 優秀賞)

▷トロッコ問題における多角的考察」の知財記事はこちら


エシカル消費に対する社会貢献的意識の実態

受賞者:赤堀 結・畑 香澄/東京学芸大学附属国際中等教育学校 高校3年論文全文はこちら

midashi akahori

本研究では、エシカル消費に対する社会貢献的意識の実態を、テキストマイニングによる書籍や企業理念の調査、そして企業と有識者へのインタビューから探求した。その結果、現状のエシカル消費においては、いかに社会に貢献できるのかが誇張され、一消費者としての責任が蔑ろされているということが明らかになった。私たち消費者は、最低限果たすべき責任と、それから先の社会貢献について、明確に区別しなければならない。(卒論 OPEN AWARD 2022 優秀賞)

▷「エシカル消費に対する社会貢献的意識の実態」の知財記事はこちら


SDGs活動がブランドイメージに与える影響とZ世代からの評価

受賞者:秋山 翔/立命館アジア太平洋大学 国際経営学部 卒業論文全文はこちら

midashi akiyama

結論、企業はZ世代からポジティブなブランドイメージを得るためにSDGs活動には取り組むべきである。だが、Z世代は企業に対して壮大な社会課題への取り組みを期待する一方で、取り組みを評価する際には課題への確かな実行力を求めている。また、Z世代がこれまでの人生で国際的価値観を形成する機会があったかどうかが、社会問題への関心や、社会貢献活動を行う企業の正当性を判断する意識・能力に影響を及ぼしていると言える。(卒論 OPEN AWARD 2022 優秀賞)

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▼審査員特別賞

ConvivialChat: 遠隔会話ツールにおけるテキストとスピーチの共生

受賞者:藤井 孝弘/神戸大学国際人間科学部グローバル文化学科 卒業論文全文はこちら

midashi fujii

チャットに送信したテキストが機械音声で読み上げられる機能、気軽で確かな反応を可能にする音声付きのリアクションボタン、音声発言がチャットのログに表示される機能といった、チャットによる参加者と音声通話による参加者が互いに対等で相互補完的な話し合いを行うための諸機能を備えたシステムConvivialChatを提案する。声による発言と文字によるメッセージが相互に補完し合う新たなコミュニケーションスタイルの提案でもある。(卒論 OPEN AWARD 2022 審査員特別賞)

▷「ConvivialChat: 遠隔会話ツールにおけるテキストとスピーチの共生」の知財記事はこちら

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▶︎入賞論文発表会イベントレポートはこちら:「卒論 OPEN AWARD 2022」の入賞論文が決定―虎ノ門ヒルズARCHにて学生たちによるピッチイベントを開催
▶︎ 「卒論 OPEN AWARD 2022」募集要項

以下より詳しい論文記事をご覧いただけます。

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