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2024.09.02

知財ニュース

【9月1日は防災の日】災害に備える防災・危機対策テクノロジー

「天災は忘れた頃にやってくる」——— そんな警句をよそに、近年では忘れる間もなくさまざまな災害が私たちの身の周りに降りかかってきています。地震大国日本を襲う地震や、従来のパターンでは予測できない気候変動、記録的な豪雨と猛暑、そして、突如発生する台風。

「災害大国」である日本で社会を形成し生きるためには、そうした災厄のリスクと長く付き合いながら暮らしていくしかないのかもしれません。しかし、過去の災害の記録から学び、最新のテクノロジーを活用して今後の防災・減災に向けて知見を蓄えることは可能なはず。そんな不測の未来に備えるためのヒントとなる防災知財を、9月1日の「防災の日」に合わせてまとめてご紹介します。

表面に塗るだけで木材を“燃えにくく”する透明塗料「難燃WOOD塗るだけ」

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難燃WOOD塗るだけ」とは、木材に塗ることで燃えにくくできる透明な塗料。従来、燃えにくい木材の製造には、大掛かりな装置を使用して木材に難燃薬剤を染み込ませる手法が用いられてきたが、この手法は高コストで、装置のサイズを超える木材に適用できない。一方「難燃WOOD塗るだけ」を使用すれば、さまざまな大きさの木材を、従来の3分の1から2分の1程度のコストで準不燃材料(加熱開始後10分間燃焼しない材料)に変えられる。
建築基準法による内装制限や、脱炭素化社会に向けた国産木材利用促進の観点から燃えにくい木材のニーズが高まる中、本知財がさまざまな建築物に活用されることが期待される。

ブロック建造物を耐震補強するコーティング技術「Power Coating」

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Power Coating」とは、 樹脂に特殊な繊維を混ぜた塗料で、外壁に塗るだけで組積造(石やレンガ、コンクリートブロック等を積み上げて作る建築物の構造)の建物の耐震補強ができる技術。建物のどの部分にどの位の補強が必要か補強設計を行い、負荷のかかる部分に塗布して建物の耐震性を高める。塗るだけで耐震補強が可能なため、特別な技術を必要としない。低コストで地球に優しい素材であり、将来、途上国において、組積造の建造物での地震犠牲者が貧富を問わずゼロとなるために活用されることが期待される。

発熱する布で調理・保温するポータブルレンジバッグ「WILLCOOK®」

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WILLCOOK®」とは、発熱する布で調理や保温ができる持ち運び可能なレンジバッグ。糸一本一本が発熱する布製ヒーターと専用バッテリーで発熱させる仕組みで、5分で80℃まで発熱可能。温度調節機能もあり、電子レンジのように食材の温め調理ができる。軽くて持ち運びしやすいため、外出先やオフィス、被災地など、場所を問わずに温かい食事をとることができる。アウトドア・レジャーや災害時、日常での活用に加え、ヘルスケア・医療分野などへの展開も期待される。

折り畳んで運搬でき、自分で組み立てられる簡易住宅「インスタントハウス」

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インスタントハウス」は、簡単な組み立てで即座に機能する住宅システム。断熱材と留め具のシンプルな構造で、誰でも1日で簡単に建設でき、太陽光発電パネルなどの設備も接続できる。構造は頑丈で断熱性、遮音性に優れ、完成サイズの100分の1の大きさで運べるコンパクトな設計のため、運搬や保管も容易で災害時や緊急避難時に迅速な仮設住宅の構築が可能。建設工事の人件費も含めた材工を最小限にした建設が可能で、迅速で持続可能な居住空間を提供する技術として注目されている。

電気・ガスを使わず新聞紙でごはんが炊ける炊飯器「魔法のかまどごはん」

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魔法のかまどごはん」とは、電気やガスを使わずに、新聞紙を燃料にしてごはんが炊ける炊飯器。かまど部分の穴に新聞紙を入れて火をつける動作を、左右交互に繰り返すことで、炊き立てのごはんが出来上がる。関東大震災から100年を迎えた2023年に、被災時でも炊き立てのごはんが食べられる炊飯器として開発された。災害時はもちろん、アウトドアや日常的にエネルギー使用量を減らす手段としての活用や、インフラ整備が進んでいない国内外の地域への展開などが期待される。

▶︎防災特集「知財が支える危機対策テクノロジー」

▶︎防災特集「不測の未来に備えるための防災テクノロジー」

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