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2024.02.27
知財ニュース
世界初、大阪大学がレーザー光により害虫を撃ち落とす新技術を開発―食料増産に期待
大阪大学レーザー科学研究所の藤寛特任教授、山本和久教授らの研究チームは2023年1月19日、「レーザー学会学術講演会第43回年次大会」で、世界で初めて、農作物を荒らす害虫のレーザー光による駆除に成功したことを発表した。
世界中の農家の悩みの種である害虫。2017年には、世界の農作物生産額165兆円のうち、およそ26兆円の農作物が害虫・害獣被害で失われているとされており、近年は化学薬剤(農薬)に対する抵抗性を持つ害虫も増えているという。
こういった状況から、世界ではすでにレーザーによる物理的な駆除の実用化が進められており、アメリカでは家畜等に寄生する蚊の駆除に用いられている。しかし、この技術は、全体照射が容易に可能な小さな虫に限られており、大きな虫には全体に照射するためのより大きなエネルギーが必要だった。
そこで、同研究チームは、薬剤耐性を持ち、キャベツを一晩で食い荒らす蛾の一種であるハスモンヨトウを対象に実験を実施。青色半導体レーザー光を照射し、各部位の損傷度合いを調べた。その結果、胸部や顔部が「急所」であることが判明。飛んでいるハスモンヨトウを画像検出で追尾し、青色半導体レーザーでパルス光を照射することで撃ち落とすことに成功したという。
なお、本技術は、近年猛威を振るうサバクトビバッタの撃墜や、家庭のゴキブリやハエの駆除への応用も可能とのこと。世界的にはインドを中心に爆発的な人口増加が問題になっている中、研究チームは食糧増産に大きく貢献する技術として期待を寄せている。
Top Image : © 大阪 大学