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2024.12.05
レポート | CHIZAI YOUTH
AI・生成AIの進化と可能性を探る──AI・人工知能EXPO&フードテックジャパンレポート
生成AIをはじめとした人工知能技術が急速に進化する中、その最新動向を発見できる「AI・人工知能 EXPO」と「フードテックジャパン」が千葉・幕張メッセで11月20日から22日にかけて開催されました。両イベントでは、生成AIの活用がビジネス現場にどのような変化をもたらしているか、そして今後の展望を示す多彩なサービスが展示されました。
本記事では、会場を巡った知財図鑑インターン「CHIZAI YOUTH」の視点で気になったテクノロジーをピックアップしてお届けします。
(取材・文:小栁 碧羽)
汎用AI研修から生成AIリテラシー教育まで──AI・人工知能EXPO
「AI・人工知能EXPO」では、生成AI技術を活用した実践的なサービスやツールが多く出展されていました。特に目を引いたのは、以下の取り組みです。
生成AI研修プログラム
ChatGPTやCopilotを活用した企業向け研修サービスが数多く紹介され、プロンプトエンジニアリングや報告書作成の効率化を目指した具体的なプログラムが注目を集めました。これらの研修は、企業全体でAIスキルを底上げし、DX推進に役立てることを目的としています。ChatGPTのようなAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)では使用者の理解度やスキルに応じてその性能が大きく変わるため、社員全体で基礎的なAIスキルを習得することが重要であり、これにより、人間が「煩わしい」と感じる業務を削減し、業務全体の効率化が期待されます。
DMM WEB CAMPによる生成AI活用研修
AIとの英会話
株式会社スピークバディが提供するAI英会話サービス「スピークバディ」を体験しました。このサービスでは、一般的な英会話レッスンでよく使われるフレーズの練習に加え、AIを使ったユニークなミッションに挑戦できる機能が特徴です。AIとの無制限の会話が楽しめるだけでなく、ユーザーが発した発音を記録して苦手な箇所を徹底的に練習できる点が魅力的です。特に、忙しくて学習時間が限られている方や、人との英会話に抵抗を感じる方にとって、人間に近い自然なコミュニケーションを提供するこのAIは非常に頼りになる存在だと感じました。
リテラシーの格差を埋める「生成AIパスポート」
今回の展示で特に興味を引いたのは、生成AI活用普及協会が提供する資格「生成AIパスポート」でした。この資格は、生成AIに関する基礎知識やリスク対策を学ぶことを目的に作られ、具体的には、AIを活用したコンテンツ生成の手法や事例を学ぶだけでなく、個人情報保護や著作権侵害、商用利用の可否といった企業コンプライアンスに直結する重要なポイントを理解することができます。
展示会場では、この資格試験の簡略版を実際に体験することができました。普段から生成AIを活用している私も、迷うような生成AIの基礎知識や生成物の権利に関する問題が含まれており、改めて生成AIについて学ぶことの重要性を実感しました。現在もAIによる絵画や音楽などの生成物が権利問題で議論されている状況を考えると、こうした座学を通じて知識を体系的に学べる機会は非常に価値があると感じました。
自身が受けたテストの結果。スコア的には高いほうとのことでした。
また、この資格を取得することで、生成AIを安全かつ効果的に活用するための実践的なリテラシーを身につけることができるため、企業や個人がAI時代に適応し、生成AIの活用が広がるにつれて、こうした資格が標準化され、取得が必要となる時代が訪れるのではないかと強く感じました。
AIを活用した飲食業界のイノベーション──フードテックジャパン
飲食業界のデジタル化を支援する「フードテックジャパン」では、生成AIを活用したユニークなサービスが多数紹介され、注目を集めていました。生成AIを活用したサービスといえば、公開特許情報からその技術を活かした事業アイデアを大量に作成する、知財図鑑の提供するアイデア共創プラットフォーム「ideaflow(アイデアフロー)」がありますが、フードテックジャパンでも、データを基に新しいアイデアを生成する技術が多く登場していました。
新商品コンセプト生成(MINTEL)
世界と国内の市場に関する独自の視点をご提供する消費者/市場/新製品/競合他社分析を行っているMINTELでは、市場調査データを活用した生成AIによる新商品のコンセプト提案サービスを発表していました。このサービスでは、MINTELの膨大な消費者データや市場動向の情報を基に、会話形式でニーズに応じたアイデアを提供します。企業はこの機能を利用することで、消費者のニーズに即した新商品の開発を、これまでよりも効率的かつ効果的に進めることが可能になります。
注目すべきは、提案されるアイデアがMINTELの精密な市場調査データに裏付けられている点です。まるで高い専門知識を持つアナリストと直接対話しているような感覚で、具体的かつ実現可能な新商品コンセプトを生み出せる点が非常に魅力的だと感じました。
気分でワインを提案するAIソムリエ(Scentmatic)
以前「妄想プロジェクト」で紹介されたSCENTMATIC株式会社は、顧客の嗜好や気分に応じて最適なワインを提案する「AIソムリエ」のデモンストレーションを行いました。このAIソムリエは、実際のソムリエが評価した情報とSCENTMATIC独自のプロンプトを組み合わせて提案を生成しています。
デモでは、タブレット端末を通じてAIソムリエの提案を体験でき、まるで一流のソムリエと直接相談しているかのような感覚を楽しめる点が大きな魅力でした。さらに、このサービスは特定の場所に縛られず、どこにいても同じ高品質な提案を受けられるため、自宅やイベント会場などさまざまなシーンで活用できる可能性を感じました。
知財図鑑で紹介した「LiDR」
以前に知財図鑑でも取り上げたサントリー「LiDR」のロボットアーム展示が行われており、実際にロボットアームを使って液体の中に絵を描くデモを観ることができました。このロボットアームは非常に高速かつ正確に動作し、立体的な絵を短時間で描くその技術力には圧倒されました。「LiDR」は視覚的なインパクトが大きく、SNSやなどでも話題になる可能性が高い技術なため、早期の実用化とより広範な分野での活用が期待されます。
まとめ
生成AIが広げる未来の可能性
今回の展示会では、生成AIがビジネスや日常生活に深く浸透していく未来の可能性を感じさせる内容が多く見られました。特に、社内データを活用したAIサービスの開発や、AIを用いた効率的なコミュニケーションツールの活用などの取り組みが目立ちました。
また、生成AIを活用したユニークなアイデアや事例が次々と紹介される一方で、AIを使いこなすための使用者リテラシー教育の普及が求められている点も印象的でした。AI技術が広がる中で、正しい知識と活用方法を学ぶことが今後大切になると感じました。
これからもAI技術がどのように社会に変革をもたらすのか、その動きを今後も注視していきたいと思います。
取材・文:小栁 碧羽(CHIZAI YOUTH)