No.961
2024.12.05
舌で操作できるハンズフリーのインターフェース
MouthPad^
概要
「MouthPad^(マウスパッド)」とは、舌の動きでデジタル機器を操作できるハンズフリーのインターフェース。マウスピース型のインターフェースで、舌に加えて顎・頭の動きや、呼吸でコンピューターやスマートフォンなどの操作が可能で、手の運動機能に制限があってもデバイスを利用できる。これまでも、障がい者向けの口にくわえるスティックや音声・視線で操作する技術などが存在したが、歯を失うリスクや操作のしづらさ、長時間操作の困難さといった課題があった。「11番目の指」として舌に着目し、既存課題を解消するインターフェースを実現している。手の障がいを持つ人だけでなく、両手が塞がる家事・育児などの日常生活や作業現場、医療・介護、宇宙空間など幅広い領域での活用が期待される。
なにがすごいのか?
舌の動きでデジタル機器の操作が可能
精度の高い動きができる舌に着目
デバイスの新たな操作手段として広く活用できる
なぜ生まれたのか?
人間拡張技術の研究開発を進める中で、両手に障がいを持つ人向けのインターフェースとして誕生した。マサチューセッツ工科大学のメディアラボからスピンオフしたスタートアップ企業、Augmental Technologies Inc.が開発・設計・製造を手がけている。誰でも直感的にコンピューターシステムを操作でき、テクノロジーとの関わり方の幅を拡げることを目指して開発された。
2023年4月の発表後、同年6月に開催された「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル2023」の画期的なアイデアやテクノロジーを評するイノベーション部門で、グランプリを受賞。2024年1月には、「CES 2024」で行われたCTA(全米民生技術協会)のヘルステクノロジーピッチコンテストで最優秀ピッチ賞を受賞している。製品の本格販売前に、登録制で先行販売を開始しており、本社を構えるカルフォルニア州内へは、2024年3月時点ですでに出荷を始めている。
なぜできるのか?
多様な動きができる舌の活用
動きの幅が広く器用で、高精度な操作ができる舌を有能な部位とみなし、活用できるインターフェースを構築している。透明なマウスピース型インターフェースの前歯付近に、舌の力の強さや動きを感知する感圧タッチパッドとセンサー、制御を司るマイクロプロセッサーを搭載。左右のクリックやドラッグなどを舌の動きで操作できる。舌だけでなく、顎・頭の動きや呼吸でも操作可能。また、「MouthPad^」を装着した状態で会話も可能なため、音声認識ソフトも同時に使用できる。
デバイス機器との高い互換性と無線通信
WindowsやmacOS、Linux、iOS、Androidなど、標準的な基本ソフトウェア(OS)に対応。新たにソフトウェアをインストールすることなくそのまま使用できる。Bluetooth技術を用いており、ワイヤレスでPCやスマートフォン、タブレット、ヘッドセットなど様々な機器に接続可能。Bluetooth接続の機能を持ったデジタル機器であれば、ほぼ対応しているという。また約2時間の充電で5時間以上の連続使用が可能で、500回以上の再充電ができる。
3Dプリントによるオーダーメイドの型
ユーザーの歯型をもとにカスタマイズしたマウスピース型を、3Dプリンターで作成している。素材には、アライナーなどの口腔器具に使われている、安全性が高く、軽くて耐久性のあるソフトレジン(樹脂)を活用。またバッテリー装置には、医療用インプラントグレードのバッテリーを長年製造してきた独Varta社製を採用している。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © Augmental