No.615
2022.02.21
完全に体内で分解する、「食べられる」電子デバイス
可食ワイヤレス生体情報センサ
概要
「可食ワイヤレス生体情報センサ」とは、体内で完全に分解するカプセル型可食センサー。外カプセルと内カプセル、通信機能付きアンテナで構成され、消化管内をセンシングする。従来、経口摂取型のデバイスは不消化性の材料でできており、体内に滞留するリスクなどがあった。一方、本カプセルセンサーは可食金属やライスペーパーなどの消化可能な材料のみで作られており、体内で完全に分解される。医療をはじめとするさまざまな分野での活用が期待されている。
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生態系のサイクルを可視化する「プラネット・ウォッチ」
「可食ワイヤレス生体情報センサ」を小型化し、指定した動物の腸内環境で作用するようにカスタマイズすれば、自然界の動態をモニタリングできる「プラネット・ウォッチ」システムができるかもしれない。
例えば、オホーツク海を周遊するイワシの魚群や、北海道の川を遡上するサケの魚群に散布すれば、ベールに包まれた水生生物の動きや消息を詳細に追跡モニタリングできる。毎年決まった時期・地点に定期的に可食カプセルを散布することで、魚や動物の経年変化や外来種との捕食関係など、俯瞰した視点で環境をウォッチできるようになるだろう。
なぜできるのか?
腸内で開く2層のカプセル
「可食ワイヤレス生体情報センサ」は、腸溶性コーティング外カプセルと、腸内細菌で分解するシートと可食アンテナを含む内カプセルから構成。内側のカプセルは腸内細菌の分解で開き、腸内細菌の活性度が高いほど開くタイミングが早くなる。
腸内細菌の活性を検知するアンテナ
カプセル内部の基板には、極薄の金で作製した可食アンテナを実装。アンテナが体液に触れると発する信号が変化するため、体外から腸内細菌の活性度が分かる。
無線LANの周波数帯を使用
センサーは、体外から電波を当てると特定の信号を返信。信号の送受信には、無線LANで使用される5GHz帯の電波が用いられるため、将来的にスマートフォンなどとの連携がしやすい。
低コストで実現可能
金は厚さ約100ナノ(1000万分の1)メートルに加工して用いるため、低コストで作製可能。より安価なカーボンペーストを採用すると更にコスト削減が可能という。
相性のいい産業分野
- 医療・福祉
消化管内の生体情報の予測、薬物と組み合わせたスマート錠剤の開発
- IT・通信
腹部にスマホを当てると信号を返す体内センシングシステムの開発
- 製造業・メーカー
究極にウェアラブルな健康モニタリングデバイスの開発
- 食品・飲料
人間以外の動物に応用することで畜産のスマート化に活用
- メディア・コミュニケーション
腸内環境に合わせた食事をレコメンドをしてくれるアプリケーション
- 官公庁・自治体
災害時に活躍する、位置情報や体調を伝達する経口型GPS
- 環境・エネルギー
土の中に挿入し土壌微生物の働きをセンシング
- 教育・人材
カプセルに埋め込まれたキャラクターが消化されていく様子をドラマ化した教育コンテンツ