No.873

2024.07.31

味覚の再現装置を使った“味のタイムトラベル”

Taste Time Machine

Miya_top

概要

「Taste Time Machine」とは、飲食物の味を過去や未来の味に変化させる技術。飲食物の味の変化をモデル化し、味物質や中和剤を添加することで、例えば未熟なトマトや作りたてのカレーの味を数日後の味に変えたり、熟れたトマトや一晩おいたカレーの味を以前の味に戻したりと、数日後の味や数日前の味を再現できる。なお、味の再現には飲食物の味を変える装置「TTTV3」や食品の時間を操る味覚AR装置「Taste-Time Traveller」、スプーン型の装置「Chronospoon」を使用。未熟な食材や熟れすぎた食材の味の調整や、賞味期限の調整によるフードロスの削減など、多様な分野での活用が期待されている。

なにがすごいのか?

  • 食品の時間経過による味変化を高精度で再現

  • 味の変化をモデル化することで未測定の味に対応

  • 食材ロスを防ぐ汎用性と多様な応用可能性

なぜ生まれたのか?

明治大学の宮下芳明教授は、CGやデジタルの力で人間の表現能力を拡張する技術を開発。とりわけ味覚に関しては、味覚を再現するディスプレイ「TTTV」や電気の力で塩味を増強する食器「エレキソルト」など、さまざまなデバイスを開発し、2023年にはイグノーベル賞の栄養学賞を受賞している。

今回の研究で宮下氏は、味の時間変化に着目。熟成や発酵など、時間の経過とともに美味しくなる飲食物がある一方、腐敗や酸化によって、風味が落ちる飲食物もあることから、「時間」を飲食物を美味しくしたりまずくしたりする調味料ととらえ、「TasteTime Machine」の開発に踏み切った。

なぜできるのか?

飲食物の味と時間の関係性を数式化

「TasteTime Machine」の開発では、味覚センサ-による実測データと理論モデルをもとに飲食物の味と時間の関係を数式で表現。実験では、トマトやカレースープの味を味覚センサーで日ごとに測定しモデル化した。こういった数式化により、未測定の値や未知の時刻の味推定が可能になった。

「TTTV3」が実現する多様な味の再現

「TasteTime Machine」で用いられる「TTTV3」は、20機のチューブポンプから味溶液を滴下し、飲食物の味を変化する装置で、酸味を弱めたり,味の相互作用を利用したりといった味の減算も可能なため、さまざまな味を表現できる。

相性のいい産業分野

教育・人材

容易に入手できない食材の味を再現して食育教材として活用

食品・飲料

加熱食材に生身食材の味、生身食材に加熱食材の味など、逆行した味を付与した新味覚の食品

生活・文化

地酒の熟成具合をモデル化した教材を酒職人の新人教育に使用するなど、歴史や伝統の伝承

AI

あらゆる飲食物の味の変化を学習したAI

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 明治 大学